飛行機の燃料は何?ジェットエンジンはどれくらいの燃料を使って燃料代はいくらかかるのか
突然ですが問題です。
飛行機の燃料は次のうちどれに一番近いでしょうか?
(飛行機の燃料の話になるとだいたい出るテンプレ問題)
(シンギングタイム3秒)
答えは①灯油です。
つまり、石油ストーブと飛行機はほとんど同じ燃料を使っています。
ということで、今回は航空機の燃料について話してみます。
「飛行機の燃料代は1時間で数十万円くらいかかる」と言うとだいたい驚かれるのでその辺も踏まえて説明しますので、是非続きを御覧ください
エンジンの種類
まず飛行機はなんの燃料をつかっているのか?
「飛行機の燃料は灯油に近いものだ」という話をしましたが、燃料の話をするにあたって、はじめにエンジンのことを簡単に説明させてください。
航空機のエンジンは主にレシプロエンジンとガスタービンエンジンの2種類があります。
https://www.khi.co.jp/energy/gas_turbines/outline.html
レシプロエンジンは車のエンジンと一緒です。
燃料を燃やしたエネルギーをピストン運動に変換して、それをまた色々変換して回転エネルギーに変えているもの。車がタイヤを回すのに対して、航空機はプロペラを回しているということです。
このレシプロエンジンに使用する燃料は実は「航空用ガソリン」であって、灯油ではありません。だからレシプロエンジンのことをガソリンエンジンとも呼びます。
しかし、現在はレシプロエンジンを利用している航空機はかなり種類も数も限られるので今回の説明では省いています。
現在ほとんどの航空機で使用されるエンジンはガスタービンエンジンです。いわゆるジェットエンジンと呼ばれるものもガスタービンエンジンの一種です。
旅客機のように外見的にジェットエンジンだとわかるのものもありますが、実はプロペラ機やヘリコプターなどもガスタービンエンジンの力でブレードを回してます。
ですので、ほとんどの航空機はガスタービンエンジンが採用されており、このガスタービンエンジンの燃料が「ほぼ灯油のようなもの」ということになります。
航空機用燃料の特徴
飛行機の燃料は灯油のようなものではありますが、もちろんガソリンスタンドなどで購入できる灯油と全く同じではありません。
航空機での使用に必要な条件を満たすために、普通の灯油より純度が高かったり、添加剤が加えられています。
一般的なガソリンや灯油と比較して次のような特徴があります。
・発熱量が大きい
これは単位重量あたりのエネルギーが大きいということ。なるべく少ない燃料で大きなエネルギーを生み出せた方が
、飛行機に搭載する燃料が少なくて済んで軽い、そして同じ積載量でも航続距離や時間が伸ばせます。
・燃焼性が良い
これは燃えカスやススなどがなるべく残らずに全てが燃焼されるということ。飛行中にエンジンが汚れて性能が落ちたり、燃料系統が詰まったりしたら困ります。
・凍結しにくい
航空機用の燃料はマイナス40℃〜マイナス50℃くらいまでは凍結しないようにできています。(燃料の種類によって幅がある)
高高度を飛んでいるときは、外気温が普通にマイナス20℃とかマイナス30℃とかになるので、凍結しないように燃料が作られています。
・安定性が高い
なにか他の成分と結合して変化してしまったり、温度の影響で変化してしまったりがないように作られています。つまり、飛行中に燃料がちゃんと使える状態のまま安定していることが求められます。
航空機用燃料の規格
それでは航空機の燃料の規格を簡単に。
加えられている成分が違って、性能や特性がちょっと違うものがいくつかあります。
https://www.eneos.co.jp/binran/part02/chapter01/section03.html
詳しく話すと長くなるので、飛行機の燃料もいくつか種類があるんだなと理解していただければ十分です。
(詳しくはwikiで!)
燃料の単価はどれくらい?
では、航空機の燃料はどれくらいの値段なのか?
一応調べてはみたのですが「正確な金額は答えられない」という判断になりました。(コロナの影響でジェット燃料が1バレル57の安値という情報は出てきた)
なぜかというと、「原油の価格が変動する」というのが理由の一つです。車のガソリンや灯油と一緒で値段が変動するので、いくらですとは言いにくいです。
もう一つの理由は、買い方で単価が変わること。
車のガソリンのように数十リットル程度の量で買うことはなく、おそらく航空会社が何十万リットル単位とか、もしくは長期の契約で買い付けているはずなので、大量買いしたらそのぶん単価は安くなります。
ですので、一般の人がイメージできるように1リットル単位に直しところで単価があまり参考になりません。
あとは価格に含まれる税金のかけられ方も違うので、純粋に燃料がいくらとは非常に言いづらいです。
こういった前提を踏まえて超ざっくり値段を言うのであれば、1リットルあたり100円とかになるんじゃないかなと思ってます。市販の灯油とあまりかわらないくらいのイメージです。
とは言え、「数百円支払えばジェット燃料が1リットル買えるか?」となると、「そういうわけではない」ことは聡明な皆さんはご理解いただけると思います。
例えば、1機100万円とか200万円する本格的なラジコン飛行機があります。ラジコンと言えども小型のジェットエンジンがついていますので、当然航空燃料を使用します。
ラジコン用の航空燃料であれば1リットル単位で入手できますが、この場合だと1リットル当たり数千円以上という価格になっているようです。
飛行機は燃料使用量が凄い
では、なぜはっきり分からない燃料の単価の話をしたのか?というと、
「飛行機の燃料代が高額なのは単価ではなくて量の問題である」
ということを伝えたかったからです。
車やバイクのガソリン代より飛行機の燃料代の方が高いんだろうなというイメージはあると思います。イメージとして「1時間で数十万円くらい消える」と話すとだいたい驚かれます。
燃料の値段が高いのでなく、使用量がとても多いんですね。車などと比較すると桁が違います。
ざっくりとですが、航空機のサイズ別に時間あたりの燃料使用量を紹介します。
この数字に燃料の単価(適当に100円とか)をかけ合わせて、燃料代がどのくらいか想像してみてください。
■〜100席 ボンバルディアCRJなど
2000〜3000L/1時間
■100〜300席 B737など
3000〜6000L/1時間
■300席台 B777など
6000〜9000L/1時間
■400席台 B747
10000L以上/1時間
(※環境や条件によって異なります)
結構な使用量ですよね。
車のガソリンタンクはだいたい30〜50Lくらいで満タンですが、それを1分で使い切るイメージです。
なので、1時間のフライトで燃料代がだいたい数十万円という規模になってきます。
まとめ
余談ですが、
■F-15戦闘機のAB
50000L/1時間
1分間で900Lくらい燃料を燃やす計算になります。(だいたい合ってると思う)
アフターバーナーはまたちょっと特殊な燃料の使い方ですが、燃料消費量が極端に多いです。
ただ、ABは数十秒とか時間制限ありでエンジン推力を上げるものなので、一時的にしか使えません。もし、常時ABを使うと10分くらいで燃料タンクが空になってしまいます。
(ハンターハンターで言うところのエンペラータイム)
飛行機は燃料代だけでもこれだけかかる乗り物であることを考えると、格安航空などで1人数千円程度から乗れるのは凄いですよね。
今度、石油ストーブや石油ファンヒーターを使うときは「飛行機と燃料同じなんだな」と思って温まってください。
それではご視聴ありがとうございました。
Youtube動画版
参考情報
■川崎重工/ガスタービンとは
https://www.khi.co.jp/energy/gas_turbines/outline.html
■wikipedia/航空用エンジン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%AA%E7%A9%BA%E7%94%A8%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3
■wikipedia/ジェット燃料
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%88%E7%87%83%E6%96%99
■ENEOS/ジェット燃料
https://www.eneos.co.jp/binran/part02/chapter01/section03.html
■masdf.com/ジェット戦闘機の燃費ってどのくらい?
http://www.masdf.com/crm/jet.shtml
■ラジコン
http://www.jetsetj.com/index.php
■ラジコンジェット飛行機の画像
Webwings74 / CC BY-SA (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)