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【正しく知ろう】医療用麻薬の誤解 

みなさんこんにちは、救急医のかたかたです🚑
私は日々活用できる救急等の医学知識を発信しています👊🏻
私の詳しい紹介は以下をご覧ください。

今回は、医療用麻薬について一緒に学んでいきましょう!
まずお伝えしておきますが、医療用麻薬とは病院や在宅医療で使われる強力な鎮痛剤のことです。

え、麻薬?ちょっと怖いし怪しい?危険なのでは?と思われるかもしれませんが、まぁ少し落ち着いてください。
確かに「麻薬」という言葉がみなさん不安や誤解を招いているのは事実です。
まずこの記事を書くきっかけとなった私の経験についてお話しします。
その後、一緒に学んでいきましょう!


私の体験談

私は救急医の傍ら、在宅医療で訪問診療もしています。
訪問診療は自宅や施設に伺い、診察や処方をすることで、私はある末期がん患者やその家族と出会いました。
私はその方の主治医ではなかったのですが、緊急往診があり伺いました。
依頼内容を簡単にいうと、癌が進行し本人の苦痛が大きくなっていたため病院(緩和ケア病棟)に入院したいとのことでした。
確かに伺った際に本人から苦痛の訴えがあり、自宅での対応は厳しそうと判断し最期を看取る病院へ搬送となりました。

内容だけ聞くと特に変わった点はなく、末期がん患者のたどる一般的な経過でした。
しかし、違っていた点が一つだけありました。
通常、癌末期の方は想像できないほどの痛みを感じることがあります。
医師はその痛みを取る薬を駆使するのですが、最終的には「医療用麻薬」であるオピオイドといわれる薬を使用することが多いです。
しかし、この方はご家族の考えによりその薬剤の使うことができませんでした。
ご家族の考えとは、「頭がおかしくなるのではないか」「麻薬を使うのは怖い」といったもので、その考えのため主治医より処方はされていたものの全く使われていなかったのです。
結果として実際に強い痛みがあったものの、それが十分に伝わらず、入院に至り、入院先ですぐにオピオイドを使用され、最終的には安らかな最期を迎えられたそうです。

この話には、確かに家族と主治医との関係性や家族への説明の問題が関係しています。
ただ、主治医からはオピオイドについての説明が複数にわたりなされていましたが、聞きいれてもらえなかったようです。
この体験を通じて、私はオピオイドに対する不安や誤解を少しでも解消したいという強い思いが芽生えました。

それでは、この薬剤について一緒に学んでいきましょう。


医療用麻薬とは

厳密には少し違うのですが、医療用麻薬はオピオイドという薬のことを指します。
オピオイドとは痛み止めの薬です。
その効果はとても強く、市販の鎮痛剤では対応できないほどの痛みに使われます。
健康な人には使われず、主に癌などで強い痛みがある人に使われます。
代表的なものとして、次のような薬があります。

  • モルヒネ

  • ヒドロモルフォン

  • フェンタニル

  • オキシコドン 

他にもいくらか薬剤がありますが、ここでは割愛します。
ちなみに普段飲むような鎮痛剤って何って人は以下の記事に少し記載しておりますのでご確認ください。


どうして誤解が生まれる?

これまでの内容を読まれて、すでに使いたくないと思う人もいるかもしれません。
私が考える誤解が生まれる理由は大きく二つあると考えています。

麻薬という言葉が用いられている

普通、麻薬という言葉が良い意味で使われることはないですよね。
医療用であっても使いたいとは思えないというのは十分理解できます。
そもそもなぜ麻薬と言われるのか、それは上記の薬は主にアヘンから作られた、もしくは派生したものだからです。
アヘンというのは昔からある麻薬で、今は悪いものという印象を持つ人もいるでしょう。しかしアヘンは大昔は鎮痛剤として使われていました。その後依存性の強さや乱用により、現在は使われていません。
そのアヘンからモルヒネが作られ、それをもとに化学的に合成されたものが上記の薬です。
そのため麻薬という言葉が使われます。
やむを得ないことですが、その麻薬という響きが多くの人を不快・不安な気持ちにさせる原因となっています。

依存や中枢作用に不安を感じている

麻薬は依存がある、そして頭がおかしくなってしまうといった話を聞いたことがありますでしょうか。
実際の体験談でも、友人の親がオピオイドを使用して少し意識が変になったということを聞いて恐ろしく感じたからという原因もありました。

現実として、確かに麻薬の作用には依存性や中枢作用(意識が変になる)といったものがあります。
より詳しく中枢作用を説明すると、ぼーっとしたり幻覚が見えたり訳のわからないことを言ったりすることをいいます。
そう聞くと、やはり怖い薬じゃないかと思われるかもしれません。
しかし適切に使用していれば依存はほとんどでることなく、中枢作用もある程度抑えながら使用することも可能です
依存については日本ペインクリニック学会で示されている通り、日本にではほぼ報告されていません。
中枢作用においては、容量が多くなるまではあまり見られません。
ぼーっとなる状態と痛みに耐えながら最期を迎えること、どちらの方がより良いと思われるでしょうか?


まとめ 〜そしてお願い〜

以上をまとめると

  • 医療用麻薬、つまりオピオイドは非常に強力な鎮痛剤

  • 依存性や中枢作用を副作用としてもつ

  • 適切に使用されれば、日本において依存の報告はほぼない

  • 中枢作用はありうるが、痛みを取るには使用を避けられない場合がある

このようにまとめることで少しでも不安が和らげば幸いです。

ここで私からのお願いです。
私はオピオイドを使用を強く勧めるつもりではありません。
しかし痛みはその人にしか感じられないもので、痛みを取るための薬が他になくなった時、オピオイドが必要になるかもしれません。
ご自身が使う場合なら自由ですが、他人がオピオイドを使用する際には、ご自身の考えだけでその使用を妨げないでいただければと思います。
あるいは、その考えをきちんと話し合い、全員が納得できる結論を導いていただければ、医療者としてもその気持ちに寄り添うことができます。
どうか、よろしくお願いします。


最後まで閲覧いただきありがとうございます👍🏻
いつもスキやコメントをいただきとても嬉しいです😆
ではまたお会いしましょう!

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