子ども産んだら2万分の1人が罹る病気になって死にかけた①
3月に出産をして、男の子が誕生した。
が、『母子共に健康』という口上は述べられない結果になってしまった。
見出しにも書いたとおり、出産したら死にかけた。
切迫早産で寝たきり生活から解放された臨月、その頃にはもう子宮口が3cm開いており、いつ産まれてきてもおかしくないという状況だった。
しかし、2週間経ってもまだ産まれず。
39週0日に検診があり
俗に言う『内診グリグリ』をされ、内診後にトイレで破水しそのまま入院。
ただ、入院手続きしている最中は陣痛もきておらず、まだ大丈夫だろうという謎の自信を抱え、夜に行われるWBCの予選を見るためにテレビカードをすたこら〜と売店に買いに行くという、今思うとなんという呑気ぶり。
昼飯ももうそろそろだし、さてゆっくり食べて体力つけておきますかぁと気楽に考えていると
ンン…イッテェ…
イッテェェンダヨォォォ!!!
と思わず口に出してしまうほどの腹痛が来た。
多方面からめちゃくちゃ痛いとは聞いていたが、例えるなら足の小指をぶつけたレベルの鈍い痛みが腹の中で定期的にくる感じ。陣痛の痛みを例えるときに鼻からスイカ出す感じって、出したことないのに言うんじゃねぇ、と誰に対してでもない憤りを心の中で叫ぶ。
飯を食いながらうまい!イテェ!うまい!イテェ!って感じになりつつも、なんとか痛みに耐えていた。
昼飯後に立ち会い出産オッケーだったので、主人も仕事を半休にし病院に駆けつけてくれて介抱してもらう。
介抱してもらうも、蹲るほどの痛みになってきて、陣痛室へ。
痛みから溢れ出る暴言という暴言を助産師に吐き散らかし、水をくれだの汗を拭けだの主人をここぞというばかりに扱き使った。
痛みのインターバルの度に『まだですか…まだ産まれないですか??』としつこいほど聞く始末。
陣痛から7時間経って、佳境に至るも、体力の限界。痛みのインターバルに寝落ちするくらい消耗してくる。内診の前半で担当してくれた先生が女子プロ顔負けのボディプレス(正しくはクリステレル圧出術)を喰らわせてくる。体全体を使って腹を押されるものだからこれがまたギェェェと叫びたくなるくらいの激痛。
そんな処置をされてもまだ頭が出てこない。
そろそろ吸引分娩をしますといわれ、吸引は3回目でだめなら帝王切開をしますと言われ、3回目でスポーンズルズルという感覚。
ついに我が子を出産した!!
元気な産声が響く。
7時間というスピード出産で感極まり、うるっと来ながらありがとうございます…と伝えていると
あれ
腹いてぇ…
後陣痛ってやつ?
それにしてはめちゃくちゃいてぇ。
『すみません、めちゃくちゃお腹痛いんですが』と伝えていると、胎盤を取っている先生の顔が険しくなる。
『エコー持ってきて』『〇〇先生読んで』『救急に電話して』という声が飛び交う。
あれ、これやばいな?
足の先にある処置ベットに横たわる我が子の姿がどんどん増えてくる人によって見えなくなる。
こりゃ寝たきり生活してるときに読んでたコウノドリで見たことあるシーンみたいだ。
『出血が○cc……輸血処置……』
何が何だかわからない状況だったが、子宮からかなりの血が出てるらしい。個人病院での出産のため、処置ができないので総合病院に救急搬送されることになった。
ということは、もうそろそろ体調に影響が来るのでは…と思っていたら、案の定息苦しさが徐々に出てくる。
意識が段々と遠退くが、ガラガラとベッドごと運ばれて、救急車に乗って、主人に何かを伝える声、早口で飛び交うやりとりが聞こえたのはわかった。
『子宮摘出の可能性』
『出血多量』
『酸素濃度は…』
並べられた言葉の羅列に、ああ、これは死ぬんだ…と覚悟した。
さらに頭に浮かぶのは自分が棺桶に入って家族と知人に囲まれている姿と、主人と子どもが2人で暮らしている想像。ビビりな自分なはずなのに死の恐怖に怯えることなく、走馬灯も見えずに、何故か、死んだ後のことを冷静に考えていた。
ただ、まだ意識はかろうじてある。
とにかく意識をなくさないようにするために、声を出していたが何を言っていたかは覚えていない。
そうこうしているうちに搬送先の病院に到着した。
『ショーツを切ります』と『処置を行います』という言葉のあとにこの世のものとは思えない腹痛を感じ、叫ぶ。
そのときは何をされたのかわからなかったが、おそらく子宮からの出血を止めてもらったということだけは理解した。血が止まらなければ子宮摘出という判断が下っていたが、適切な処置でそれは免れた。
その後異常な寒気に襲われ電気毛布をかけたり、身体を温めてもらったりとしてもらううちに段々意識が戻ってくる。どのタイミングで輸血をされたのかは覚えていないがそれが間に合ったおかげである。
ただ、血液がなくなると脳に異常が出るという知識があったため、1〜10を頭の中で順番に足す計算をして、55になったのを安心する。言っておくが、もちろんこんなことをしたところで脳に異常があるかどうかは判断出来るわけがない。拙い知識故の拙い素人の考えである。
とりあえず、一命は取り留めたのであった。
続く
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