オロロンによる遠隔操作【天候術師のサーガ 32】
〜 飛空艦サミダレ 艦内 オロロンの部屋 〜
オロロンは
もともとの自分の部屋に居たが
どうにも自分の部屋だという意識は
皆無だった
『ぼくがこの人たちと
一緒に居たの?
ホントに?
いまいち信じられないなぁ。
なんだか怖そうな人たち
ばっかりだし…。
あの師団長とかいう人も
信用できないよ。
問題はナナミとアガヴェだ。
おばあちゃんはぼくのことを
覚えているみたいだけど、
ナナミとアガヴェは覚えていないみたいだ。
どうしてだ?
ぼくをここに連れてきたのは、
あのユースコールとかいう男だったな。
あいつの魔法のせいかもしれないぞ。
ぼくが着ていたパーカーに
魔法が残っていたのが幸いだった。
ここはひとまず、
思い出した魔法で…。』
── 雨の天候術師、オロロン
オロロンは
こころの中でぶつくさぼやきながら
両手を上にひらげて
思念波を呪文に乗せ
魔法を発動した
裏網雨徒
ジャバダバダバダ、
ジャバダバダ。
サンカクシカク、
エヲカクエンカク。
アメニハウソハ、
ツケマセン。
ミズニモモチロン、
ツケマセン。
ワガナハオロロン、
アメノウェザード。
ヒャクニンリキノ、
ナミダノチカラ。
── オロロン
オロロンの両目から
涙がこぼれ
天に向けた手のひらに落ちた
手のひらに落ちた涙は
渦巻きを成し
手のひらの上で坂巻いた
そして
頬を伝った涙のあとが
ぼうっと青白く光った
〜 アガヴェ家のシェルター 脱衣所 〜
先ほどアガヴェが
洗濯機に押し込んだパーカーは
青白く光りはじめ
洗濯機の蓋を押し上げた
ずぶ濡れのパーカーは
まるで人が着ているように
形を保ちながら
袖を足代わりにして歩き始めた
33へつづく