研究室への潜入【天候術師のサーガ 39】
〜 アガヴェ家のシェルター 換気口 〜
ナナミが換気口の蓋を開けると
プロペラが回っていた
ちょっと、アガヴェちゃん。
電源止めて〜。
── イノリゴ島の少女、ナナミ
はいよ〜。
── 島ギャル、アガヴェ
アガヴェが換気扇の電源を落とすと
プロペラはゆっくり動きを止めた
これをこうして…、こうして、
こうして…、こうっ!
── ナナミ
ナナミは手際良く換気扇を分解すると
瞬く間にダクトへの通路を確保した
わ〜、ナナミっち、すごいや。
そんなこともできちゃうの?
── アガヴェ
うん、まぁね。
勘でなんとか。
── ナナミ
勘でできるもんなん?
── アガヴェ
アガヴェは不思議そうに
分解された換気扇のネジを見つめて言った
それでは、失礼します。
── ナナミ
ナナミは手を合わせて
お祈りする仕草をし
魔導デバイスの
蛍の光モードを頼りに
換気口のダクトの中へと入った
どぉ?ナナミっち。
── アガヴェ
うん、まぁ、そんなに汚くはないかな。
虫はいなさそう。
あ、でも降りられないかも。
── ナナミ
ナナミっち、高いとこ怖いんだもんね。
下見なけりゃだいじょぶっしょ。
── アガヴェ
ナナミに続いて
アガヴェも魔導デバイスに
明かりを灯し
換気口のダクトの中へ入った
意外に狭いな…。
うち太ったかな…。
やっぱお菓子控えないとダメかぁ〜…。
とほほ。
── アガヴェ
ふたりは
パパの研究室に向けて
ダクトの中をじ這っていった
お風呂場からなら
研究室は割と近いんじゃないかな。
やっぱり部屋じゃないから
体感の距離と実際の距離に
違いがありそうだね。
間違わないようにしないと。
── ナナミ
そうね〜。
シェルターの換気口って
こんななってるのか。
── アガヴェ
ふたりが換気口を
ゆっくり進んでいると
突然ナナミの姿が
一瞬にしていなくなった
わぁあああああ〜!
── ナナミ
ナナミの叫び声は
虚空の闇の中に消えた
え?
ナナミっち?
── アガヴェ
アガヴェが
ナナミの消えた場所を
明かりで照らすと
急勾配になっていた
ほほぉ〜。
シェルターの中に
こんな遊び道具が
隠されていたのか〜。
てか感心している場合ぢゃないか。
── アガヴェ
アガヴェは急いで
ナナミが滑り落ちていった
急勾配のダクトを滑り降りた
途中で興奮を抑えきれず
叫び声をあげてしまったが
すぐに我に返って口を
手で押さえた
しゅるりと華麗に着地したアガヴェは
あ〜、楽しかった!
── アガヴェ
と満足げに笑っていたが
床に倒れ込んだナナミを見て
一気に血相を変えた
ナナミっち!
大丈夫?
どっか打った?
── アガヴェ
うぅ…。
おしっこ漏れた…。
── ナナミ
あらま。
これは魔導ドライヴのやりすぎで
バチが当たりましたな。
── アガヴェ
もう魔導ドライヴはやりませんから
お嫁にだけは行かせてください…。
── ナナミ
あはははは!
ん?
なんだこれ?
── アガヴェ
アガヴェは
ナナミが落ちた勢いで
研究室の棚の上から落ちた
ファイルを拾い上げた
『魔導人間兵器開発計画』?
なんだこれ?
── アガヴェ
アガヴェは
ファイルのページをめくった瞬間
ファイルを地面に落とした
アガヴェちゃん、どうしたの?
── ナナミ
どうしよう…。
ねぇ、どうしよう、ナナミっち…。
うち…、どうしたらいいの…?
── アガヴェ
アガヴェちゃん、
落ち着いて!
ゆっくり息吸って。
── ナナミ
アガヴェは半狂乱になり
半ば過呼吸気味になった
ナナミは
アガヴェが開いたファイルに目を通した
うそ…。
── ナナミ
ファイルには
『実験体第一号 アガヴェ』
と確かに書かれていた
40へつづく
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