祈りを捧げて
レジスタンスの面々は
エレベーターホールを目指して
歩いていた
ミナミは俯き加減で
とぼとぼ歩いている
ミナミ
悲しいのは分かるけれど
きっとお母さんも
元に戻るよ
ワタヌキがやさしく諭した
あなたが戻してくれるの
え
あなたがママを戻してくれるの
ぼくにはそんなこと
出来ないよ
じゃあそんな無責任なこと
言わないで
ミナミは明らかに
冷静さを欠いていた
ワタヌキは苦虫を噛み潰したような
顔をした後
落ち着き払って
ミナミに向かって話した
いいかいミナミ
ぼくにはお母さんが居ない
きみは元に戻ればいつだって
会えるんだ
ぼくはもう二度と会うことが
出来ない
だからってきみの方がまだマシだなんて
ぼくは言うつもりはない
でも
希望は捨てちゃダメなんだ
ぼくだってまだ母さんに会えるような
そんな気がしているんだ
会えることなら会いたいよ
一回も会ったことがないのだから
信じていればきっと
その時はやってくる
だから先ずは
きみ自身のことを
信用してあげてよ
ミナミはまたもやボロボロと
大粒の涙を流し始めた
辛いよね
ぼくもたまにそんな気分になるよ
ミナミを抱き締めて
ワタヌキも少し泣いた
ライスワイフは
雑草の髪の少年に向かって
少し微笑んだが
彼にはその微笑みの理由は
分からなかった
◆ 戦利品 ─【同じ境遇】
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