蛹に舞い戻る蝶【Miracle Fanta詩 Ⅱ 286】

ドブナガによる
ホッキョクの救命措置が続いていた

ホークジョウの赤い蝶は
ことの重要さを掻き消すように
ひらひらとゆったり舞っていた

そしてホークジョウは
もうひとつの魔法を
この密集した半径幾寸かにかけた

それはスノーマンズ兵に
見つからないようにするための
隠遁魔法だった

ホッキョクの血液で出来た
赤いの蝶と同じ原理で
空気中の僅かな水分で
自分たちの像を乱反射させて
視界には映らなくさせる幻術魔法である


「……まずい…、心停止の時間が長過ぎる…!
……おい、死ぬなよ…!
……キミが死んだら、ボクのせいになるんだからな…!
……そんな酷いこと、死んでもしてくれるなよ…!!」
── 発明家、ドブナガ


ドブナガは
半泣きになりながら
心臓マッサージを繰り返し行った

傷口からは
真っ赤な蝶が
相変わらず羽ばたいて行った

ホッキョクの顔にも
いよいよ生気がなくなって来た頃
ホークジョウは
祈りを込めて
赤い蝶を再度傷口へと
戻してあげた

まるでその様子は
蛹を割って出て来るまでの
蝶がその逆の手順で
ホッキョクの血管へ
戻って行くようだった


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