雨の師団《レインコート》の一大事【天候術師のサーガ 25】
〜 上空 不可視領域 飛空艦サミダレ 船内 師団長室 〜
な、何にも覚えていないだって〜?
── 師団長ユースコール
ユースコールは素っ頓狂な叫び声で絶叫した
その声は船内の至る所に響き渡り
艦の各部屋からあらゆる人物が顔を出した
ちょっと〜!
何よ!うるさいわね〜!
師団長、
お昼寝の邪魔しないでよ!
睡眠不足はお肌の大敵なのよ!
── 種蒔き係、ロリポップ
ど、どうかしたのか、師団長?
── 整備士、ポンチョ
なんだい、びっくりしたよ。
そんなにおっきい声を出して
一体どうしたっていうんだい?
── デザイナー、ウォルタ
師団長、何か問題でも?(ウル)
師団長、何か問題なのですか?(ルル)
── オペレーター、ウルとルル
どうしたんだい、師団長!
他の師団の奴らが
また問題を起こしたのかい?
── 種蒔き係、ドロップ
え、え、え。
何が起きてるの?
わからないよ。
── 種蒔き係、ティア
やめてくれ…。
そんな悲しいことが
あっていいわけないだろう?
ぐすん。
── 演出家、ナダゾウ
オロロンが…。
私たちのことを…、
何ひとつ覚えていないって…。
── ユースコール
ユースコールは涙ぐみながら
師団長室に集まってきた
みんなに対して語った
ちょっとオロロン!
何寝ぼけたこと言ってんのよ!
あたしと結婚するって約束
どうなったのよ!
── ロリポップ
ちょっと…、
ロリポップ、そんな約束
いつしたんだよ…。
ぼく、わからないよ。
── ティア
おいおい、勘弁してくれ…。
たとえこうして生きていたとしても
忘れ去られちまったら
死んだも同然なんだぜ?
悲しすぎるだろ、オロロンよ!
ぐすん。
── 演出家、ナダゾウ
ワシは整備士だからなぁ。
かといって、脳みそは整備してやれないなぁ。
困った…。
── 整備士、ポンチョ
オロロン!
まだどっちが多く種子を撒けるかの
勝負が着いてないんだぞ!
── 種蒔き係、ドロップ
あぁ、かわいそうなオロロン。
記憶を失くしてしまうなんて…。
やっとこれで
天候のデザインがしやすくなったよ。
キミの天候術には
ヤキモキしていたからね。
っとまぁ、これは冗談なんだけど、
どうにかしないとね。
ユースコール、
雷の師団に電撃療法を
頼んでみてはどうだい?
── ウォルタ
雷の師団だと?
くっ、ヤツらに頼みに行くのはしゃくだが
この際仕方ないか…。
ウル、ルル、
目標進路の座標を
飛空艦イカヅチへ変更!
── ユースコール
承知しました。
── ウルとルル
飛空艦サミダレは
雷の師団の飛空艦
イカヅチに向けて進路をとった
26へつづく
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