真夜中の号令【天候術師のサーガ 42】
あれ、ドアが開かない。
── 島ギャル、アガヴェ
貸して!おりゃ!
── イノリゴ島の少女、ナナミ
ナナミはロックされていた
研究室のドアを力ずくで開けた
うそでしょ…。
── アガヴェ
ふたりはイルリオスたちの寝ている
二階の寝室に向かった
ちょっと待って!
いや、先行ってて。
── ナナミ
?
あぁ、わかった。
── アガヴェ
アガヴェは一瞬首を傾げたが
すぐさま何のことか感じ取った
ナナミは振り向きざまに駆け出し
ナミナおばあちゃんの居る部屋へ向かった
ナナミが部屋のドアを開ける前に
ナミナおばあちゃんが
部屋のドアを開けた
なんだか騒がしいね。
なんかあったね?
── ナミナおばあちゃん
うん…、そうなの。
今すぐここから逃げなくちゃ。
理由はあとで話す。
── ナナミ
ナミナおばあちゃんの足腰は
常人のそれとは異なり
かなりの健脚なので
二階への階段も朝飯前だった
〜 アガヴェ家のシェルター こどもたちの部屋 〜
アガヴェは急いで部屋に入り
弟妹たちを叩き起こした
みんな、起きて!
早くここから出るよ!
── アガヴェ
弟妹たちはアガヴェの
信じられないくらい
巨大な叫び声を聞いて
パニックになった
四女セメレは
びっくりしたのか
泣き出してしまった
あぁ…、ごめんね。
びっくりしたよね。
でも、早くここから出なくちゃ。
── アガヴェ
出るって、こんな時間にどこへ?
何が起きたって言うのさ?
── アガヴェの妹、オウトネ
アガヴェは神妙な面持ちで
次女オウトネの顔を見つめた
遊園地に行く、ってことにして。
── アガヴェ
オウトネはアガヴェの小声が
上擦っているのを察し
状況の緊急性を即座に察知した
みんな!
これからアガヴェお姉ちゃんが
遊園地に連れてってくれるってさ!
いや〜、みんなで遊園地なんて
何年振りだろうね〜!
── オウトネ
アガヴェは弟妹たちにバレないよう
オウトネに向けて両手を合わせた
43へつづく