置いてかれたシザーナ【天候術師のサーガ 26】
飛空艦サミダレの艦体は
依然修復し切っておらず
大きな爪痕が残ったままだった
師団長、
艦体まだ完全に修復し切っていませんが…。
── 整備士、ポンチョ
構わんさ。
このサミダレは
そんな傷じゃへこたれない。
安心したまえ、
きっと自己治癒してくれるよ。
── 師団長、ユースコール
ユースコールは
ハットの下から
ニヒルな笑みを浮かべ
ポンチョをなだめた
あれ?
師団長、
シザーナお姉ちゃんは?
どこにいるのかしら?
ねぇえってばぁ!
── 種まき係、ロリポップ
ん?
そういえばそうだな…。
一体どこに…。
── ユースコール
雨の師団にはもう一人
船員が在籍しているようだ
オペレーターのウルが
覗き窓に視線を移すと
何やら上空でサミダレと並行して
飛行する物体を目撃した
師団長、
あれを…。
── オペレーター、ウル
どれどれ。
あ、よかった。
シザーナがグライダーに乗ってるね。
ウル、ハッチを開けてあげて。
── ユースコール
ウルはハッチの開閉レバーを下ろすと
サミダレの腹部に位置する
ハッチが開いた
先ほどサミダレに並行して
飛行していたグライダーは
ハッチに向かって飛び込んだ
その瞬間、
グライダーを覆っていた
擬態用の雲はぱしゅんと消え
それとともに合金の機体も
艦と同化し無くなってしまった
痛ったたた…。
おしりぶつけた。
── 美容師、シザーナ
シザーナは長い下まつげで
人形のような端正な顔つきをしており
切り揃えられた前髪を含め
常に濡れているかのように
波打っている
波打ち際のテトラポットのように
カチューシャをはめている
服は長袖の青緑色のミニスカートワンピースをまとい
襟や袖などの一部には白くアクセントが施されていた
足元は青緑のショートソックスと
ショートブーツが覆っていた
シザーナは司令室に入るや否や
ユースコールを静かに詰めた
わたくし、天空農園の調整をしてくると
言いましたわよね?
師団長、聞いていなかったのかしら?
── シザーナ
あれっ、そうだっけか…。
忘れていたよ。
すまん、すまん。
── ユースコール
ユースコールはバツが悪そうに
シザーナから目を逸らした
操縦桿を握るナダゾウは
ユースコールの方を向いていたが
彼はそのまま進路をとれと言わんばかりに
軽く手を挙げ合図した
27へつづく