欺瞞の食卓【天候術師のサーガ 27】
〜 イノリゴ島 西部 アガヴェ家のシェルター 〜
さ、夕飯にしましょう。
── アガヴェのママ
わぁい!
ママ、今日のメニューはなぁに?
── アガヴェの弟、ポリドラス
ん〜?
今日はね〜、なんだと思う?
── アガヴェのママ
なんだろぉ〜。
ちゅてーき?
── アガヴェの妹、セメレ
あ〜!
ちょっとおしい!
── アガヴェのママ
別になんだっていいじゃん。
私、お菓子でいいよ。
── アガヴェの妹、アウトネ
あ〜、お姉ちゃん!
ダメなんだよ!
ママがちゃんとご飯作ってくれてるのに
お菓子ばっかり食べて!
子豚さんになっちゃうんだから!
── アガヴェの妹、イーノ
るっさいなぁ〜、
イーノはイルくんの世話しててよ。
── アウトネ
てはちててお。
── アガヴェの弟、イルリオス
は〜い、イルくん。
お席座りましょうね〜。
あ、フォーク投げちゃダメよ!
危ないから!
── イーノ
わかった!
ラムチョップだ!
── ポリドラス
ピンポンピンポ〜ン!
正解で〜す!
マスタードたっぷりつけて
召し上がれ〜!
ほら!
アガヴェもそんなとこ突っ立ってないで
はやく席について!
── アガヴェのママ
う、うん…。
── 島ギャル、アガヴェ
あら、パパ遅いわね。
まだお部屋でなんかやってるのかしら?
パパ〜?
ご飯できたわよ〜?
── アガヴェのママ
見ての通り
アガヴェ家はパパとママ、
長女のアガヴェそれに加えて
次女のアウトネ、三女のイーノ、長男のポリドラス、
四女のセメレ、次男のイルリオスの大家族だ
ふぅ〜、
今行くよ。
── アガヴェのパパ
アガヴェのパパは
自室のラボにて
何かの作業をしている最中だった
作業を中断して
家族の集まる食卓へと向かった
さ、みんな揃ったわね!
たんと召し上がれ〜!
── アガヴェのママ
いただきま〜す!
う〜ん!
おいひ〜!
やっぱりママの料理は
世界一おいひいよ!
── ポリドラス
宇宙一、でしょ?
── アガヴェのママ
アガヴェ、
無事で何よりだな。
いただきます。
食べないのか?
冷めてしまうぞ?
── アガヴェのパパ
うん…?
うん…。
いただきます…。
── アガヴェ
アガヴェはラムチョップを頬張るふりをして
口の中にたくさん溜め込んでいた
うちで料理を食べるのは
久しぶりじゃなぁい?
どう?アガヴェ!
おいし?
── アガヴェのママ
うん、おいひいよ。
── アガヴェ
アガヴェは内心
ナナミの家で食べた
肉まんやエビチャーハンの方が
よっぽどおいしいと思っていた
アガヴェは
テーブルの下に隠した袋に
食べたふりをしたラムチョップを
吐き出していた
どうだ?
調子は?
学院は楽しいか?
── アガヴェのパパ
え?
何言って…?
見てないの?
外…?
── アガヴェ
なんのことだ?
── アガヴェのパパ
学院は
無くなっちゃったんだよ?
たくさん人だって死んでたし…。
── アガヴェ
え?
うそ。
学院無くなったの?
── アウトネ
アガヴェ、
食事中です。
そんな話やめなさい。
── アガヴェのママ
なんで、
それなのに…。
こんなにいつも通り
食事ができるのよ!
信じらんない!
── アガヴェ
あ、こらちょっとアガヴェ!
── アガヴェのママ
うぇぇぇぇえ!
── イルリオス
あら〜、ごめんねイルくん。
怖かったねぇ〜。
よしよし。
── アガヴェのママ
アガヴェはリヴィングを
勢いよく飛び出した
28へつづく
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