歪んだガムを噛む

ザンパムは目醒めると
ブリキの身体に
違和感を感じた
腕の隙間に
何やら板状のものが
挟まっている
恐らくこれは
本来の形では
ないのだろう
歪に折れ曲がっている
ザンパムや
起きたか
賢者ドミニスリヤは
片腕でザンパムを
抱え続けていたが
やっとその荷も
降りると思うと
少し安堵した
ザンパム
ワタヌキが呼びかけると
きみ
そのガムを噛めば
何にだって
なれちゃうんだろう
だったらさ
ぼくのお願い
聞いてくれないかな
ザンパムはいまいち
この状況が分かっていなかったので
戸惑ったが
面子を見て
なんとなく諦めがついた
寝ている間に
連れてこられたわけね
もういいわ
寝たらなんだか落ち着いたし
そんでお願いって
なんなの
頭のなかの記憶には
あるんだけれど
いまいち言葉に出来ないんだ
ザンパム
ガムを貸しなさい
ドミニスリヤがそう言うと
安息瓶を取り出して
ほれ
ここに念じてみたまえ

でも
いいから早く
分かった
見えない何かが
瓶のなかへと吸い込まれると
それをそのまま
ガムに振りかけた
ほれ
これ食べるの
ワタヌキの願いじゃ
一回くらい
聞いてやってもよかろう
ザンパムは
口にガムを放り込んだ
ワタヌキは
息を呑んで待っていた

◆ 戦利品 ─【肉マントのガム(ワタヌキの願い味)】

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