金箔船舶

「ウィードの意思号、しゅっぱ〜つ!!
ヨーソロー!!」
── 意思号の船長、ライスワイフ


ライスワイフは
勢いよく面舵いっぱい切った

泥沼から離れていくに連れて
船底に付着した泥が
意思号が足跡を残すように
乾いて地上に落ちていった

そして
船体は時間が巻き戻ったかのように
眩しく光る金色の輝きを
取り戻していった
それは船内も例外ではなかった

先程まで陰りのあった船内も
船体が元の輝きを取り戻すとともに
同じように徐々に輝きが戻った

ちょうど
砂浜に波が押し寄せるみたいに
やがて古びた部分は
金色に煌めいた部分に
飲み込まれていった


「ま、眩しいヨ…!なんだこの輝きは!!」
── 千里眼、シスルー


防衛本能が働いたのか
シスルーはその現象の起きる少し前に
こう言い放っていた

船内は輝きを取り戻すとともに
空飛ぶ観賞魚のような生き物も泳ぎ始めた
ホークジョウの幻術まほうで召喚したものとは
また異なるもののようだった
乗組員クルーに干渉することはなく
ただ優雅に空中を泳いでいただけだった

所々に座席もあったので
立つことに疲れた者は
腰を下ろしていた


「ただいまより、敵軍へ進撃する!
目標は"冬籠りのクジラ号"!!
白雪の大軍《スノーマンズ》!!!」
── ライスワイフ


まだ陽は三つのうちのひとつが
地上を照らしていた
これが沈めば
夜になる



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