雲の檻
ホッキョクの身体は引きちぎれたが
ホームラの手のなかに
彼の身体は残らなかった
風でも吹いたように
何処かに消えてしまった
ホームラは辺りを見回したが
ホッキョクの姿は見当たらなかった
いつの間にか
ホームラの周りには
雲が取り囲んでいる
ということに気がついた
上空のはずなのに
見渡す限り真っ白だ
ホームラは
森の中に迷い込んだような
気分になった
時折
ホッキョクの笑い声が聞こえてくる
飛べないはずのホッキョクは
雲間を走り
ホームラを牽制していた
「隠れてないで出てこいよ、卑怯者!」
手を鉄の竜に変化させ
辺り一面を切り裂き回った
しかしながら
どこもかしこも
雲しかなかった
ホームラは次第に不安感を募らせ
発狂するに至った
「おい、ホームラの様子がおかしいぞ。グライダーと一体化してるし、何よりなにかに怯えているようだ。
シスルー、様子を見てくれないか?」
ガニメデ大佐は
思念波通信でシスルーと会話した
「い、いやですネ!あ、あんな禍々しいもの、嫌ダ!狂気が、渦巻いているヨ!!」
シスルーも
尋常じゃないほどに怖がった
大きな瞳が
更に大きくなって
今にも溢れ落ちそうになっていた
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