雨雲の飛来【天候術師のサーガ 16】
早く…、病院を探さなきゃ…。
── イノリゴ島の少女、ナナミ
ナナミとアガヴェはそれぞれ
おばあちゃんとオロロンを
背負いながら
魔導レーザー兵器によって
焼き尽くされた街を
よろめきながら歩いた
すでに
彼女たちの体力は
限界を迎えようとしていた
の…、喉乾いた…。み、水…。
お腹も空いた…。
── 島ギャル、アガヴェ
照りつける太陽は
彼女たちから
容赦なく気力を奪っていった
つい昨日まで通っていた学院も
まるで溶けたチョコレートのように
レーザーの熱で見るも無惨に溶けていた
それでも幸い
学院だとわかるほどには
形を留めていた
学院がここだとしたら
病院は…。
── ナナミ
ナナミは学院の位置を頼りに
病院の位置を推測した
しかし、
病院があった位置は
見るも無案に焼け野原になっていた
病院が…、ない…。
── ナナミ
そ、そんなぁ…。
── アガヴェ
ふたりが絶望していると
快晴のはずの空に
急に雲がかかり始めた
そして雨が降り始め
ふたりにとっては
恵みの雨だった
ナナミは
アガヴェの背中の
オロロンを
アガヴェは
自らの背中を確認したが
オロロンはまだ
気を失っていた
不可思議に思っていると
大雨の中から
飛空艦サミダレが
音も立てずに上陸した
飛空艦サミダレは
光学迷彩を保ったまま
土砂降りの中に鎮座していた
サミダレの上陸した部分だけ
周りの風景とは若干違和感を生じていた
土砂降りの森の中から
ハットを被って
奇妙顔の仮面を被った
青年が降りてきた
17へつづく
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