島の惨状 Ⅰ【天候術師のサーガ 14】
おばあちゃん!
しっかりして!
── イノリゴ島の少女、ナナミ
ナミナおばあちゃんは
床下に避難しており
炎の脅威は逃れたが
酸素欠乏症に陥っており
意識はなかった
脈はあるから、
病院に連れて行けば大丈夫!
── ナナミ
ナナミは
ナミナおばあちゃんの
脈があることを確認してから
背中へおぶった
早くここを出よう!
── ナナミ
ナナミたちは急いで
ナナミの実家を後にした
一番後ろにいたアガヴェが
敷地を出た瞬間、
ナナミの実家は
ペシャンコに押し潰れた
わぁああああ!
お家がぁ…。
── 島ギャル、アガヴェ
アガヴェは慌てて
海岸沿いの防波堤に
引き下がった
ナナミは
後ろを振り向かず
どんどん前へ進んでいった
オロロンは先刻
強大な魔法を使用したせいか
意識が朦朧としていた
オロぴょん、あんたは
うちがおぶっちゃる。
── アガヴェ
アガヴェは
オロロンを背中におぶると
突き進むナナミのあとを追った
〜 イノリゴ島 海岸沿い 森林地帯 〜
ナナミの実家から歩き出して
しばらく経ったが、
青々茂っていたはずの森は
見るも無惨に灰となっていた
ひどい…。
── ナナミ
……。
── アガヴェ
ふたりとも
自分たちの知っている
島の光景ではなくなっていたことに
言葉が出なかった
ナナミは
足を気にするようなそぶりを
見せ始めたので
アガヴェは心配になり問いかけた
ナナミっち。
足、痛いの?
そうだ、
魔導ヴィークル呼ぼうよ。
ちょっと待ってて。
あれ?
何も繋がらない…。
── アガヴェ
アガヴェは魔導デバイスで
魔導ヴィークルを呼んだが
そもそも電波が通じなかった
ありがとう、大丈夫。
ちょっと靴擦れしただけ。
行こ。
── ナナミ
朝の陽気で明るいナナミとは
まるで別人のようだった
家が全焼し
家族まで負傷しているというのに
陽気に振る舞える方が
どうかしている
とアガヴェは心の中で思った
それと同時に
なんでもできる
アガヴェの憧れのナナミも
ひとりの人間であると
改めて気づき
心のどこかで安心した
15へつづく