ナナミの家族【天候術師のサーガ 28】
〜 イノリゴ島 西部 アガヴェ家のシェルター ドア前 〜
ナナミとナミナおばあちゃんは
ただただ壁についた灯りを見ていた
ナナミはびしょ濡れのパーカーを持っていたので
ふたりは幸いにも水分には困らなかった
刹那、ナナミが水を飲みながら口を開いた
ねぇ、おばあちゃん。
私のママとパパって、
どんな人だったの?
── イノリゴ島の少女、ナナミ
ナミナおばあちゃんは
少し黙って口を開いた
こんな出来事になったからには
隠しててもしょうがないね。
あんたの両親は
あんたが生まれてすぐに
戦争へ連れてかれたよ。
今回のレーザーの製造にも
関わってるかもしれないね。
この島の当時の若いもんたちはみんな
軍に連れてかれたよ。
この資本主義社会を牛耳ってる奴らは
戦争が大好きだからね。
風が吹けば桶屋が儲かるのさ。
あんたの両親は
この世界の偉い奴らが楽するのに
一役かっちまってるんだよ。
── ナミナおばあちゃん
ナナミは少し考えてから
話し始めた
そっか…。
たとえ小さな歯車だとしても
誰かの役に立ってるんだよね?
── ナナミ
なにばかなこと言ってるんだい!
たくさんの人間を殺すための兵器を作って
何の役に立っているもんか!
うちの娘は人殺しと同じさ!
大体、あんな男と結婚しちまったことが
悪夢の始まりだったんだ。
あんたの父親は国の科学者だったよ。
わしは最初反対したんだ。
これから国の情勢が悪くなるに決まってるのに、
研究者とくっついたら
きっと国に利用される。
それでもお前の母親は
やつと一緒になったんだ。
そして、予想した通り
魔導大戦が始まったんだ。
戦地での要因が足りないから
研究者まで駆り出されて
あんたの母親も一緒に連れて行かれたよ…。
命からがらこの島に逃げてきたけど、
わしの娘は…、生きてるのか死んでるのか…。
わしはずっと祈っとるんじゃが…。
── ナミナおばあちゃん
ナミナおばあちゃんは
途中から弱々しく
涙をこぼした
ナナミは
ナミナおばあちゃんが泣く姿を見て
何もわずに抱きしめた
私は生きてると思うな。
根拠はないけど、そんな気がする。
── ナナミ
29へつづく