ずぶ濡れのパーカー【天候術師のサーガ 21】
ナナミは
地面に落ちたパーカーに目をやると
不思議そうに拾い上げた
うわっ、
どうしてこのパーカー
ずぶ濡れなんだろ?
よいしょ。
── イノリゴ島の少女、ナナミ
ナナミはパーカーを絞ってみたが
絞るたびに
おびただしいほどの水が溢れ出し
絞りきれなかった
うそっ、なにこのパーカー。
絞れば絞るほど
水が出てくる!
── ナナミ
え、そんなバナナ。
うちに貸してみそ?
んしょ。
ありゃ、まぢぢゃん。
── 島ギャル、アガヴェ
べちゃべちゃだけど、
持ってくしかないね。
なんかに使えるかもしれないし。
ていうか、飲み水に困らないじゃん!
── ナナミ
ナナミは嬉しそうに
パーカーから水を滴らせ
ブンブン振り回した
そんなことしたら
大事な水分が乾いちまうよ。
水があるんなら、
食べ物と寝るとこを確保しなきゃね。
── ナミナおばあちゃん
そういえば、
アガヴェちゃんの家はどこなの?
お家、大丈夫?
── ナナミ
え…、う〜ん。
大丈夫ぢゃないかなぁ…。
わかんないけど…。
多分大丈夫。
── アガヴェ
え、ちゃんと確かめようよ!
私のうちは燃えちゃったけど、
アガヴェちゃん家は無事だといいな。
あわよくば泊めてもらったり
なんかしちゃったりして。
── ナナミ
こら、ナナミ
卑しいぞ。
わしはそんな卑しい娘に
育てた覚えはない!
── ナミナおばあちゃん
ナナミは
ナミナおばあちゃんからゲンコツを食らった
アガヴェは
こんな状況下でも
普段通りに振る舞える
ナナミたちが内心羨ましかった
ぢゃあ…。
ちょっと、確かめて、みる…?
── アガヴェ
うん、
きっとパパとママ、
心配してるよ!
── ナナミ
三人は
アガヴェの家のある方角へ向かった
22へつづく
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