記憶の欠落【天候術師のサーガ 20】
がはっ、ごほっ!
── ナミナおばあちゃん
ナナミの蘇生術の甲斐あって
ナミナおばあちゃんは
無事にこの世に戻ってきた
おばあちゃん!
よかった…!
── イノリゴ島の少女、ナナミ
ナナミは
ナミナおばあちゃんを
力強く抱きしめた
そんなに抱きしめたら
骨が折れちまうよ。
ありがとうな。
大変じゃったろう?
── ナミナおばあちゃん
ナミナおばあちゃんは
照れくさそうに
ナナミを抱きしめ返した
ナミナおばあちゃんは
抱きしめたナナミの先にある
焼け野原に目を移した
こんなのになっちまって…。
まるで、わしらが小さい頃と
同じじゃないかい…。
── ナミナおばあちゃん
山火事があったみたいなんだよね。
島のほとんどが焼け野原になっちゃった…。
── ナナミ
これが山火事だ?
なぁにを馬鹿なことを言っとるんじゃ。
山火事でこんなに酷い焼け方を
するわけなかろう。
これは兵器によるものだ。
── ナミナおばあちゃん
おばあちゃんの小さい頃には
一体何があったの?
── ナナミ
忌々しい…。
今でも夢に出てくるよ…。
大きなキノコが
この島全体を覆ったんだ…。
── ナミナおばあちゃん
大きなキノコが
なんで忌々しいの?
みんなでたべちゃえばいいぢゃん!
── 島ギャル、アガヴェ
たわけ!
そんな簡単に解決できるような
代物じゃあないんだよ!
── ナミナおばあちゃん
ひっ、ごめんなさぁい…。
── アガヴェ
アガヴェの軽はずみな言動を
ナミナおばあちゃんは
激しく叱責した
あのキノコは兵器だった
毒の胞子をばら撒き
胞子を浴びた人間たちは
瞬く間に死んでいった…。
わしも胞子を浴びたが
奇跡的に高熱にうなされるだけで
死ぬことはなかった。
その間は、
三日三晩熱でうなされて
死ぬような思いをしたがの…。
── ナミナおばあちゃん
この火事の燃え方と
その大きなキノコの話は
何か関係があるの?
── ナナミ
うむ…。
その大きなキノコが出現する
少し前に
空からレーザーが降って来たんじゃ。
街は一瞬にして今と同じようになった…。
あの時と同じなんじゃ。
何者かが大きな毒キノコを生やすための
土壌づくりをしているかもしれん。
── ナミナおばあちゃん
そんな、まっさか。
だって、レーザーなんて…。
── ナナミ
ナナミはレーザーなんてありえないと
言おうとしたものの
何か忘れていることに気がついた
正確には
思い出せない
大切なことを覚えているはずなのに
思い出そうとすると
記憶に雨で流れてしまい
違和感を覚えた
ナナミ、
昨日の坊やはどこに行ったんじゃ?
── ナミナおばあちゃん
坊や?
誰?それ。
── ナナミ
なんじゃ、あんなに一緒にいたのに
覚えとらんのか?
頭でも打ったんか?
ほれ、そこにあんたの
パーカーがあるじゃろ。
坊やに着せてやったものじゃないんか?
── ナミナおばあちゃん
ナナミはアガヴェと顔を見合わせたが
アガヴェも首を傾げて
なんのことかわからないそぶりを見せた
21へつづく