
アガヴェの家【天候術師のサーガ 22】
〜 イノリゴ島 市街地 〜
三人は焼け尽くされた
市街地を歩いた
病院を探した際と同じように
目標となる建物は
学院を除いて
ほぼすべて瓦礫となっているため、
方向感覚は無いに等しかった
学院がかろうじて
残っていることが救いだね。
流石にあんな状態で
授業はしないよね…。
アガヴェちゃんの家の方角は?
── イノリゴ島の少女、ナナミ
学院から見て西側だね。
ちょっと小高い山の方にあるよ。
多分、無事だと思う。
上はわからんけど…。
── 島ギャル、アガヴェ
ん?上?
アガヴェちゃんがそういうなら
大丈夫なのかもね。
── ナナミ
ナナミは
アガヴェの言葉に少し違和感を覚えたが
特別触れることはせず切り返した
辺りの森林や森林に隣接した家は
すべて焼け尽くされ
おびただしい量の木炭が
散らばっていた
おばあちゃん、大丈夫?
少し休む?
病み上がりだし。
── ナナミ
わしのことはいいから…。
すぐ追いつくから、
先に行きなさい。
── ナミナおばあちゃん
ナナミアガヴェが気付いた頃には
ナミナおばあちゃんは
後ろで息切れをして
遅れをとっていた
ナナミたちは
少しだけ歩くペースを落とし
再びアガヴェの家を目指し歩いた
* * *
多分…、ここら辺、かな?
── アガヴェ
アガヴェはぼそりと呟いたが
彼女の視線の先には
家などなく
そこには瓦礫の山が
積み重なっていただけだった
え…、アガヴェちゃん家も…。
家族の人は…、無事なの…?
── ナナミ
うん…、多分…。
── アガヴェ
ナナミは
先ほどから様子のおかしい
アガヴェにやはり何かあると
感じていたが
それ以上立ち入ることはしなかった
確か…ここら辺だったような…。
── アガヴェ
アガヴェはそう呟くと
ひとりで黙々と瓦礫をどかした
私も手伝う!
── ナナミ
ナナミも
率先して瓦礫をどかした
すると
瓦礫の下からは
何やら巨大なハンドルのようなものが
顔を出した
これは…?
── ナナミ
シェルターってやつ。
うちは緊急時にアラームが鳴るようになっていて
普段から訓練してたの。
だから、家族はみんなここに逃げてると思う…。
── アガヴェ
アガヴェは話ながら渋々ハンドルをひねったが
思いの外固かったので
回しきれなかった
貸して!
── ナナミ
ナナミがアガヴェに変わって
ハンドルを力一杯捻ると
するすると回転したので
ゆるまった蓋をゆっくり開いた
23へつづく