見出し画像

飛空艦サミダレ【天候術師のサーガ 11】

〜 上空 不可視領域内 天蓋ドック 飛翔艦サミダレ 〜



「サミダレ」と呼ばれる飛空艦は
天蓋ドックで
艦底の傷の修復を受けていた

天蓋ドックは
地上からは視認できない
不可視領域に位置している

正確に言うと
上空には地上の人々が視認できないように
カーテンがかかっている


 師団長ディレクター
 ターン列島イノリゴ島にて
 魔導レーザーが照射されました。
 ── オペレーターA

 またか…。
 オロロンが見つからない今
 無闇に地上を実験台にするのだけは
 よして欲しいがな…。
 ── 師団長ディレクター


師団長ディレクターと呼ばれる男は
全身黒ずくめで
ダブルボタンのスーツを着ていた

手にはステッキを手にしており
ハットを目深に被って
目元に影を落としていた

そのせいか
アンニュイな顔立ちは
より怪しさを増していた


 まだ見つからないのかい?
 もう、かれこれ一ヶ月は経ってるよ?
 のたれ死んでるって。
 早く他の地域のドックに
 移動した方がいいよ。
 ぼくらが稼働できてないから、
 地上はきっと
 干ばつになってるよ。
 ── 謎の男

 そうもいかないのだ。
 オロロンは
 我ら雨の師団レインコートにとって…。
 いや、この惑星ほしにとって
 重要な存在なのだから…。
 ── 師団長ディレクター

 師団長ディレクター
 それは言い過ぎじゃ…。
 ── 謎の男


男の話を遮るように
別のオペレーターが
師団長オペレーターを呼んだ


 師団長ディレクター
 魔導レーザーが照射された同時刻に
 付近の海岸より思念濃度変動と
 思念波ノリト反応が検出されました。
 この波形は、オロロンのものかと。
 ── オペレーターB

 ようやくお出ましか…。
 よし、イノリゴ島へ向かう。
 総員、配置につけ。
 ── 師団長ディレクター

 よりによって
 イノリゴ島?
 なんであんなヘンピな島に!
 オロロンったら、
 どこまでも鈍臭い男!
 ── 謎の少女

 ちょちょちょ、師団長ディレクター
 サミダレはまだ整備が
 完全に終わっていません!
 出発するのは
 もう少し待ってください!
 ── 整備士メカニック

 天蓋ドックのカーテン開けぇ!
 飛空艇サミダレ、発進!
 ── 師団長ディレクター

 なんて無茶な…。
 ── 整備士メカニック


飛空艦サミダレの艦体は
カメレオンのように
周りの風景と同化した

天蓋ドックのあたりに雲のようなものが発生し
雲に隠れたカーテンが開いた

カーテンの奥には
まるで青空にぽっかりと
穴が空いたように
真っ黒な空間が拡がっていた

飛空艦サミダレは
目隠し用の雲を突き抜けて
イノリゴ島へ向けて降下した


12へつづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?