冬籠りのクジラ号
あえなく
捕まってしまった
雑草の髪の少年と
その相棒アイウェオは
なにやら物騒なものを
向けられて
兵士たちに
取り囲まれていた
ふたりは
手枷のようなものを
はめられていて
火花渦を出そうと
何度か試みたが
どうやら
そういったものを
封じるものらしかった
冬籠りのクジラ号へようこそ
目の前の大きな椅子に
腰掛けた
妖艶な雰囲気を湛えた
筋骨隆々の人物が
振り返って言った
なんだか容姿の
似たような人物を
思い出してしまい
少年は早々に嫌悪感を
感じてしまったが
この船の名前は
そのようなものらしい
クジラはクマでも
あるまいので
冬籠りするどころか
一生海籠りしているが
このアバラ山脈を拠点として
活動している
巨大な要塞ということの
比喩から来ている名前だろう
きっとそうに違いない
筋骨隆々の人物は
突然ぼくの前に
妙にまつ毛の長い
目を携えた
顔を突き出してきた
◆ 戦利品 ─【妙チキリンな名前】
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