雪の方舟

ユキトビウオの大群を
引き連れて
少年たちは
アバラ山脈の山肌を
ひたすら滑り降りて行く
雪壁の立ち並ぶ森を抜けると
空にはふたつの陽が
くっきり見えた
いつしか
ユキトビウオの群れは
見えなくなり
火花渦と
雪を削り取る
ボートの底面の音だけが
辺りに響き渡っていた
暫く滑っていると
自分たちが
移動しているのでは無く
床が動いていることに
気がついた

◆ 戦利品 ─【生きている理由】

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