見出し画像

ベルガマにて -4- オトガル

いよいよベルガマ出発の日
(と言っても昨日着いたばかりなんだけど)

ホテルの朝食は想像以上に良かった
味もよく、種類も量も多かった

ホテルの朝食

そして
この時期のベルガマの朝は結構冷えるのだけど
薪ストーブに火が入っていて暖かい

身も心も温まったところで
一応、バスの確認を・・・
バスは昨日 親切なホテルオーナーに取ってもらってある

今日はベルガマを出てチャナッカレという町に行きます
チャナッカレはあの有名な”トロイの遺跡”の最寄りの町

オーナーはホテルにはいなかったけど
朝食を用意してくれた女性が何やらスマホ画面を見せてくれた

バスチケットの写メ画像だ

これを送信したいのでメアドを教えてくれという

おー
それは安心だ
ではここにお願い
とメアドを教えて送信してもらった
(トルコでは、どこのホテルでも大抵wifiがある)

でも!
確認したら時間が違う!
午前のバスって言ったじゃないか!
午後発のバスだと到着が夜遅くなっちゃう
始めて行く町に深夜着は出来れば避けたい

そのために昨日頑張っていろいろ見たのに

女性スタッフに身振り手振りで事情を離し
オーナーと連絡を取ってもらう

すぐに連絡が付き
オーナーと話すと
「え? そうだっけ? じゃあバス会社のオフィスが開いたら
空席を確認してみるよ」と

長閑な返事・・・

長距離バス乗り場は町の外にあるので
ホテルで連絡を待ってると午前のバスに乗れないかもしれない
僕は返事を待たずにバスターミナルへ行くことにした

外の空気はひんやりしているが
空は奇麗に晴れていて気持ちがいい

ここでひとつ問題が

僕は昭和ニンゲンなので
wifiのレンタルはしないし、現地のsimも買わない
ネットはホテルでのみ見れる

ということはホテルを出ると
オーナーとは連絡が付かなくなる

でもホテルにいたら
バスに間に合わない

どうしよう

えいやっ!
とばかりにホテルをチェックアウトし
路線バスで町の外にある長距離ターミナルへ

最近のトルコはだいたいどこの町も
長距離バスのターミナルは町の外の幹線道路沿いにある
(バスターミナルは ”オトガル” という)

ホテルで聞いて長距離ターミナル行の路線バス乗り場へむかう

あれ?
確かここのコーナーにバスが停まるって聞いてたけど
バス停らしきものがない!
他にバスを待っているらしき人もいない

周りの人に聞いてみても
みんな英語は出来ないようだ(あるいは僕の英語が下手すぎるのか?)
朝早いからか 店もほとんどが閉まっている

どうしようもないので
ここで周りを見張りながらバスを待つ
幸い、開けた十字路なのでもしバスが来たら遠くから見えるだろう

10分ほど経っただろうか
1台のバスが来て、近くに停まった
開いた扉に片足だけ乗せて 運転手に
「オトガル?」
と聞いてみた。
トルコ語で何を言われたか分からないけど
運転手は頷いている
きっとオトガルへ行くのだろう

安心してバスに乗り 出発

運賃を払おうと現金を出したら
「No」と言われた
「え?」
何がいけないのか?
どうやら現金は受け付けないようだ
ではカードで払おうとしたら
運転手は渋い顔をして首を振った

どういうことだ?
ひょっとして無料バス? まさかね

途方にくれていると
運転手は座席にいた女性に何か語りかけ
女性もなにか返事をしている
女性はビジネススーツ的な格好をしたOL風の人
通勤途中だろうか・・


女性が立ち上がり
僕の立っている運転席横の入り口まで歩いてきた

そしてカバンからなにやらカードのようなものを出して
ピッ
とカードリーダー的なものにタッチした

そうか!
専用のプリペイドが必要なのか
「ありがとう! で いくらなの?」
と現金で支払おうとしたら
女性は手を振って席に戻ってしまった
??

運転手を見ると
運転手はニコッと笑って 頭をちょっと傾げた

奢りなの? なんで? いや払うよ

でも 
”全部済んだことだ”
みたいな感じで
二人ともこちらを見ようともしない
女性は窓の外を眺めてるし
運転手は前を見て運転している

なんてこった!
これがトルコ人か!
なんていい国だ!

お姉さんありがとう!
遠慮なく奢られるよ
そして恩返しはどこかで困っているトルコ人にしよう

僕は安心してガラガラの車内の窓際席に座った

しばらく行くと
ちょっと開けたターミナルのようなところに来た
きっとここがオトガル(長距離バスターミナル)だろうと思い
降りようとしたら
運転手が
チッチッチッ
という感じに人差し指を振った

あ 違うのね
出口に向かっていた僕は
再び席に戻った

さらにしばらく走ったのち
今度こそオトガルだろう
という場所に来た
今度は運転手も僕の方を見て頷いている

無事に着けた
お姉さん、運転手さん ありがとう!
お礼を言おうと思ったけど
お姉さんはいつの間にかバスを降りていた

気分よくオトガルまで来たので忘れていたが
予約が確認できていないのだった
もし予約が取れてなかったら・・・

バスの運転手に直接交渉して乗せてもらおう

ベルガマのオトガルは他の町より新しくて広いけど 
寂しい
というより ほとんど人がいない
バスもいない
ここは本当に営業しているのか?

ベルガモは今日もとてもいい天気で
空は青い
でも寒い
オトガルの壁面はほとんどがガラスで出来ている
これだけガラス面があったら冷暖房はあまり効かないだろう
ちゃんと閉まっていない扉がいくつかあり
冷たい風がピューピュー入ってくる
ターミナル内に人がいないのも寒い原因だろう

バス会社の窓口は10個くらいあるけど
ほとんど閉まっている

バスを待っているらしい人も
2人・・・ いや 1人は掃除人のようだ

ほんとうにココでいいのか?
と心配になるほど寂しい
でも建物は立派! そして本当に広い!
バスなんか50台や100台くらい停まれそう

場所は間違いないと思う

でも・・・

不安な気持ちのまま
100個くらい並んだベンチに
ぽつんと座ってバスの来るのを待った

僕の他には一人だけ バスを待っているらしい男性
あの男性はどこに行くのだろう?
同じ方向だといいのだけど・・・
ずーっと電話をしていて 
話しかけられない

予約を確認して安心したいのだけど
僕が乗る予定のバス会社の窓口は閉まっている

バスが来た!
僕が乗る予定のバス会社のだ
だいぶ時間が早いけど
きっとあれだ!

運転手に聞いてみたけど
違う行先のバスだった
僕のバスのことを聞いてみたけど

「知らない」
のひとことで終わった

さっきまでいた男性が消えた
きっと今のバスに乗ったのだろう
ふたたび静寂が来た

良い方法がなく
途方に暮れていると

ひとつだけ開いている
どこかのバス会社の女性がこっちへ来た
何か協力をしてくれるのだろうか?
「ウチのバスにしなよ」とか言われるのだろうか・・?

女性は自分のスマホを僕に差し出し
「あなたに電話よ」
と言った

え???

この女性とは初対面だし
まったく知らない人だ

「僕に電話? なんで? だれから?」
矢継ぎ早に質問したが
女性は英語をほとんど話さない

(詳しい話は電話の相手に聞いて)
と言わんばかりにスマホをこちらに差し出す

状況が分からないけど
とりあえず
「ハロー?」
と尻上がりのアクセントで電話に出てみた

「ハロー 私だ。ホテルのオーナーだよ」

「え? なんで? どうしてこの電話に僕が出れると分かったの?」

「君がホテルを出た後、オトガル(バスターミナル)へ行くと思ったので
今日は誰がオトガルにいるか調べたんだよ。このスマホの持ち主の女性は私の友達だ」

「ええー? そうなの? そんなことが分かるんだ?」
「小さい町だからね」
「ところで君の乗るバスの時間変更が出来たからメールを送ったのだけど
見た?」
「いや・・・ 僕のスマホはホテルでしか見れないから‥」
「そうか。じゃあ君のチケットの画像を彼女のスマホに送るから、それを写真に撮って運転手に見せるといい」
「うわー! ありがとう! 大感謝!」

こうして僕は ”チケットの画像を受信したスマホの画面” の写真を撮り
無事に午前のバスに乗ることが出来ました。

まさかチェックアウトした後の客に
ここまで親切にしてくれるなんて!
しかも1泊しかしていない

昨日渡したお金もちゃんと届いていたんだなぁ・・

いい人だなぁ・・・
昔 イスタンブールで
タクシーに嫌な思いをさせられたことなんて吹っ飛んだ

トルコはいい国だ!

このホテルの名前は
”ペルガモン・ペンション”
です
(Barbaros, Lökçü İmam Çk. No:9, 35700 Bergama/İzmir, トルコ)

巻頭の画像はペルガモン遺跡の ”ゼウス神殿” の土台だけ
本体はベルリンに持っていかれたらしい






いいなと思ったら応援しよう!