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頭痛について真剣にまとめてみた【東洋医学臨床論】

頭痛とは

頭痛とは何か、有病率が多く筆者の周りにも思った以上に身近に頭痛持ちさんはいます。鍼灸師を目指すキッカケとなった症状です。だからこそ頭痛について真剣にまとめてみました。ご覧いただけますと幸いです。

頭痛について

頭痛とは、頭部に限局する痛みの総称をいいます。

痛みを感受する痛覚受容器(レセプター)や神経への刺激により発生しますが、刺激を受けた局所的な部位の痛みだけではなく、頸部、頭蓋、顔面の痛みを含めて表現されることもあります。

頭痛の歴史

古くはヒポクラテスも頭痛について記載していたのだそうです。
かの芥川龍之介も偏頭痛持ちで「大小様々な歯車が回っているかのよう」と表現していたそうです。

トリプタンという薬により頭痛医療は近代化(1950〜60年代)したことから、頭痛にかかる医療の歴史はそう古くないのだそうです。

頭痛罹患者を取り巻く環境

頭痛は女性に多く、有病率の高い疾患です。女性は5人にひとり、男性は16人にひとりとされ、世界では10億人の患者がいると推測されています。

また、若年層に多いことから、子どもも10人にひとりは罹患していると考えられており、学校生活にも支障をきたす方もいます。


スティグマ(差別や偏見)

頭痛がない人は全く感じたことがないため、理解が進みにくいのが実情です。

  • あの人はすぐに体調を崩すから仕事を任せられない

  • 不機嫌で関わりたくない

  • 仮病なんじゃないか

スティグマ(stigma)と呼ばれる差別や偏見の対象としてネガティブなイメージを植え付けられている方も多くいます。

21世紀頭痛

さらに、VDT(Visual Display Terminal)作業の増加、梗塞的社会、心理的ストレス等……21世紀頭痛と呼ばれるほどに、頭痛を取り巻く環境は悪化しつつあるのが現代です。

頭痛はどう感じる?

文字通り頭が痛いのは当然として、物事に集中できない、頑張れない、気分が悪くなる(嘔吐するレベル)等の症状があります。

例えば偏頭痛であれば、身体を動かすと増悪することから、ベッドで横になりたくなるくらいが重症度の目安とされています。

筆者が頭痛改善のため鍼灸師を目指すキッカケとなったのが、頭痛持ちの同僚の存在です。その同僚は、上司に休暇申請をする際「頭をハンマーでガンガン殴られているよう」と表現していました。
この場合も上司は頭痛を感じたことがなかったようで「頭痛とはなんだ?!』と逆に問い詰めていたのを今も思い出します。

長くとも1〜2日で沈静化することから、周りだけでなく自分自身でも症状を軽くみてしまうことも多いのです。

しかし、繰り返し発作的に起きることから慢性化すると、月の半分程度頭痛に悩んでしまうこととなります。


頭痛の原因

頭痛の主な原因としては血管性、緊張性、牽引性、炎症性、神経性、心因性などがあり、大まかには次の2つに大別することができます。

一次性頭痛

比較的一般的な頭痛で、頭痛そのものが生活の問題となるものを指します。
例として、緊張型頭痛・片頭痛・群発頭痛などが挙げられます。

二次性頭痛

病気に伴った頭痛を指します。
例として、くも膜下出血・頭蓋内出血・慢性硬膜下血腫・脳腫瘍・髄膜炎・副鼻腔炎などに伴う頭痛が挙げられます。

この2つのほか、「有対性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛およびその他の頭痛」に分類されます。

上記分類には、三叉神経痛・舌咽神経痛・後頭神経痛(大後頭神経痛・小後頭神経痛)などが含まれます。

なお、頭痛には様々なタイプがあり、国際頭痛分類(ICHD-3)で詳細な分類がなされています。国際頭痛分類(ICHD-3 / International Classification of Headache Disorders-3)とは、2018年に翻訳された国際的な頭痛分類です。

頭痛について階層分類しており、診断基準や細かなサブタイプなどが記されています。

危険な頭痛

今すぐ病院を受診すべき危険な頭痛を疾患と症状に分けてみました。レッドフラッグと呼ばれる医療において見逃してはならない兆候、症状です。下記の症状がある場合は必ず病院の受診を勧めます。

疑うべき疾患と頭痛の症状

  • 二次性頭痛……今まで経験したことがない頭痛。特に50歳以上の方

  • くも膜下出血・動脈解離……突発する激しい頭痛、急性に進行する頭痛

  • 脳腫瘍……早朝に生じ、徐々に増悪する頭痛

  • 髓膜炎……発熱や頂部の緊張(首が曲げられない)を伴う頭痛

  • 緑内障……目の痛みとともに視力の変化や嘔吐などを伴う頭痛

  • 側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)……全身症状(全身倦怠感・体重減少・発熱)、眼の痛みや複視、視力の減退、顎の怠さなどを伴う頭痛

  • 脳卒中(脳血管障害)……神経症状(呂律が回らない・半身がしびれる・脱力・意識障害など)を伴う頭痛

  • 中毒・脳梗塞・心疾患……自律神経症状(悪心・嘔吐・めまい・血圧異常・不整脈など)が強い頭痛

服薬習慣による頭痛

病院や治療院での問診では、これらの鑑別のほか服薬習慣の有無などを確認します。

特にロキソニン、アスピリン等鎮痛剤の使用過多(基準として月に15日を超える服薬)がみられる場合、薬剤の乱用による頭痛(MOH:Medication-overuse headache)を考慮する必要があります。

これは市販で販売されている鎮痛薬の中には、カフェイン含有の複合鎮痛薬により頭痛を起こしやすいことが認められているためです。頭痛が一旦治まるものの、カフェインにより新たな頭痛が引き起こされる悪循環に陥るわけです。

頭痛をきたす主な疾患と鍼灸治療(現代医学)

頭痛を起こさないためには、結論、全身の筋緊張の緩和(特に頭頂部や屈筋)が有効とされています。

ここからは、頭痛の種類とその原因や現代医学に基づく治療方法についてみていきます。
また、鍼灸治療での各頭痛に対するアプローチ例もご紹介します。

【片頭痛】

頭痛全体の30〜40%を占め、15歳以上の8.4%が偏頭痛を抱えているとされています。反復する頭痛発作を特徴とする神経血管性の頭痛です。
総じて若年層の女性に多くみられます。

<原因>

頭蓋周囲部の血管拡張*に伴う神経刺激や、中枢経路における感作などが原因と考えられています。

*血管拡張はリラックス状態である副交感神経優位によるもので「休日頭痛」の由来となっています。
休日にリラックスできたことから血管も拡張し、ホルモンバランスが乱れたり、エストロゲン濃度が変化するため引き起こされます。

「せっかくの休日なのに頭が痛い」
こう感じたことがある方は疑う余地があるかもしれません。

<偏頭痛の特徴>

  • 片側性が多い。

  • 拍動性の頭痛。

  • 運動で増悪する。例として、頭を振ると痛くなる、階段登ると痛い等

  • 前駆症状(閃輝暗点(目がチカチカ眩しい)、悪心など)を伴うことが多い。

  • 一部の嗜好品*(チョコレート、チーズ)などがトリガーとなる。

*嗜好品の過剰摂取による頭痛・・・カフェインを多く含む飲食物(コーヒーやお茶、エナジードリンクなど)・ピーナッツバター・赤ワインやビールなどのアルコール・チーズ・チョコレートなどは片頭痛などを引き起こすことが知られており、逆にヒジキなどのマグネシウムやビタミンB2(Mg、VB2)を多く含む食品は片頭痛などの頭痛によいとされています。

<治則>

  • 自律神経機能の調節

  • 前緊張の機和(頭頸部)

  • 鎮痛作用の賦活(血管運動を活性化させる)

<鍼灸治療の例>

三叉神経や後頭神経支配領域の反応点や、浅側頭動脈周囲部・咀筋などの頭頸部の筋緊張部位への刺鍼をします。

また、偏頭痛発作時には局所へ高頻度(30~100Hz)の鍼通電療法などを用いる場合があります。(痛いのであまりおすすめできないそうです)

【緊張型頭痛】

頭痛全体の30%程度を占めるとされています。
最も一般的にみられる頭痛で、頭頸部の緊張に伴うことが多いです。忙しく働くと頭が痛い等、環境により頭痛が引き起こされます。

<原因>

ストレスによる頭頸部の筋緊張の亢進や、中枢経路への感作などが原因と考えられます。

<特徴>

  • 両側性が多い。

  • 非拍動性の頭痛で絞扼感・圧迫感・頭重感などを伴う。

  • 頭頸部の筋緊張の亢進に随伴することが多い。

※頭部の筋にトリガーポイントがみられることがある。

<治則>

  • 筋緊張の緩和(頭頚部)

  • 局所循環改善

  • 鎮痛作用の賦活

<鍼灸治療の例>

咀嚼筋や頭頚部の筋緊張部位へ施術をします。


【後頭神経痛】

後頭神経が刺激されることで生じる、鋭い痛み(電気が通るような)を特徴とする神経痛をいいます。

*神経についてはこちらの記事もご覧いただけると、より理解が深まると思います。

<原因>

後頭部の筋緊張の亢進により、神経が刺激されたことなどが原因となります。

<特徴>

  • 後頭神経支配領域(主に後頭部)の発作性の神経痛。

  • 頭皮・頭髪への刺数により頭痛が誘発される。

  • 神経出口部の反応点(左痛点、症状の誘発)がみられます。

<治則>

筋緊張の緩和(頭頸部)・末梢神経活動の調節

<鍼灸治療の例>

頭頚部の筋緊張部位や反応点などへの施術。

  • 大後頭神経のTP:天柱

  • 小後頭神経のTP:風池


頭痛に関する情報収集

最後に「頭痛をどこに相談したら良いかわからない!」という方に向けて参考になればと思い、サイトを共有します。
また、病院に行くほどでもないけど、体調の変化をチェックしたいという方へは、アプリをふたつご紹介しますよ!

日本頭痛学会

都道府県の頭痛医療に関する病院の検索ができます。

頭痛ーる

気象予報士監修による「天気頭痛」と呼ばれる気圧の変化による体調変化を管理するアプリを発信しています。

アップマインド

自律神経を見える化できるアプリです。指先をスマホのカメラに添えることで自律神経、脈拍、揺らぎ等の状況を可視化してくれます。

頭痛タイプチェック(EVE)

「わたしの頭痛はどれに当たるのだろう?」簡易チェックを行えるのが解熱鎮痛薬EVEのページ。


以上となります、最後までご覧いただきありがとうございました。

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