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囲碁は経営の役に立つかという問いに対する私なりの答え

囲碁は経営の役に立つんですか?

って聞かれることが多いんですが、考えてみてください。
一日中囲碁を打って、囲碁のことばかり考えていたらどうなるか。

囲碁が強くなるだけです(残念ながら強くなれない場合もありますが)。

当たり前ですが、囲碁をやったら囲碁がうまくなります。囲碁がうまくなるだけです。囲碁をやったからといって、経営のノウハウは身につきません。つくわけがありません。三々定石を覚えても、3C分析の役には立ちません。

しかし、それでもなお私は「囲碁は経営の役に立つ」と断言します。

名探偵のたとえ

例を挙げてご説明しましょう。

名探偵が難事件に挑んでいるシーンを想像してみてください。

名探偵は事件の真相を解き明かすべく、頭脳をフル回転させています。

そんな折、モブキャラが何気なく「あれぇ、懐中時計止まっちゃってる」みたいな発言をします。それを聞いた名探偵は

「それだ! 謎はすべて解けた!」

と真相にたどり着く。

名探偵は事件とまったく関係のない一言から着想を得て、謎を解き明かすことに成功しました。

なぜか?

それは、名探偵が全力で事件に取り組んでいたからです。あらゆることを事件解決の役に立てられないかと考えていたからこそ、何気ない一言をヒントとして拾い上げることができたのです。

経営者も名探偵と同じです。

自社の経営について24時間365日脳みそを振り絞って考え続けている人が、囲碁を打って

「大場より急場」

「部分的には損でも先手を取って大場に先行する」

「サバキの際は全部助けようとしない」

といった教訓を得る。すると、彼らは閃くのです。

「一生懸命右下で地を囲んでいる間に、左上、右上でもっと大きな地を作られてしまった。はっ、もしや経営でも同じことが言えるのではないか? 今、わが社は○○業界のシェアに固執しているが、他の業界にチャンスがあるのではないか?」

囲碁が経営の役に立つというのは、こうした効果が期待できるからです。

具体と抽象の行き来

これは、具体的な世界と抽象的な世界の往復です。

経営学者の楠木建教授は「抽象」と「具体」の往復運動という記事の中で、こんなことを言っています。

具体的な現象や結果がどんな意味を持つのかをいつも意識的に抽象レベルに引き上げて考える。具体と抽象の往復を、振れ幅を大きく、頻繁に行うことが、「アタマが良い」ということなのです。

囲碁という具体的な世界で、たとえば「目先の地に固執して負ける」という経験を積む。そこから「部分ではなく全体を見て判断すべし」という教訓を得て、企業経営に適用する。

「部分最適ではなく全体最適を考える」

言葉にしてしまえば当たり前のことですが、抽象的な言葉では実感がないのでとっさに出てきませんし、出てきてもその通りに行動することはできません。自ら失敗を経験することで、本当に意味のある教訓になるのです。

しかし、経営という具体的な世界で失敗を経験するということは、金銭的な損失が発生することを意味します。取り戻すのに時間がかかるか、場合によっては致命傷になってしまうことも考えられます。

囲碁ならそうした経験をノーリスクで積むことが可能です。もちろん他のゲームでも同様の経験は可能ですが、囲碁は盤面が広く、打ち手の候補が他のゲームに比べて圧倒的に多い。ゆえに複雑極まりない経営の役に立つ抽象的な経験を引き出すための、最適解のひとつであると言えるのです。

まとめ

囲碁という具体的な世界で様々な経験を積み、そこから実感を伴った抽象的な経験則を得る。それを使って、経営という具体的な世界で適切な意思決定が可能になる。

囲碁が経営の役に立つというメカニズムはこういうものであると、私は解釈しています。

あと、打ってると楽しい。

友達増える。

囲碁はいいぞ。


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