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「宴のあと」事件

 こんにちは。

 「おしまいdeath!」「土下座だ!」でおなじみの半沢直樹が大好きですが、築地本願寺の掲示板に書かれていた「やられてもやり返さない。仏教だ」という精神がもっと好きな松下です(作者の池井戸潤さんも築地本願寺代表役員宗務長の安永雄玄さんも元銀行員だったところが面白いです)。

 このように作者が実体験をもとにした作品が世の中にあふれていますが、そんな中で今日は「宴のあと事件(東京地判昭和39年9月28日、下民集15巻9号2317頁)」を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったか

 作者の三島由紀夫は小説『宴のあと』に描かれた主人公たちが、元外務大臣で東京都知事選に立候補していた有田八郎と元料亭女将をモデルにしたものであることを認めていました。すると、主人公たちがプライバシーの侵害にあたるという理由で、三島由紀夫と新潮社に対して損害賠償100万円と謝罪広告の掲載を求めて裁判所に提訴しました。

2 原告の言い分

有田:「私生活をのぞき見したような小説の内容によって、平穏な余生を送れないほどの精神的苦痛を受けた。三島由紀夫と新潮社は100万円の損害賠償を払って、謝罪広告を掲載すべきだ!」

3 被告の言い分

三島:「社会的にみんなが知っている事実に基づいてストーリーを構成したが、主人公たちは自分の芸術上の意図により描写し創り上げた人物で、プライバシー侵害だと指摘する箇所はすべて自分の創作であります」

4 判決

東京地裁の裁判長:「本人が望んでいないにもかかわらず、一般に知られていない私生活上の事実を公開することは不法行為にあたる。よって、三島由紀夫と新潮社は連帯して、有田氏に80万円を支払え」

おわりに

 判決では、たとえ創作であったとしても①私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であり、②一般人の感受性を基準として当事者の立場に立った場合公開を欲しないであろうと認められるべき事柄であり、③一般の人々に未だ知られていない事柄であり、④このような公開によって当該私人が現実に不快や不安の念を覚えること、があればプライバシー侵害にあたるというのです。この点には十分に気をつけましょうね。

 では、また。


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