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こんにちは。

 北海道に猿払村というのがあるのですが、そこのふるさと納税大使に、元プロレスラーの長州力さんが就任して、おいしそうにホタテを食べていました。

 ここで橋本真也さんと長州力さんの「タコ、コラ!」「長州こらぁ~」を思いだしましたので、ぜひとも「ホタテ、コラ!」を聞いてみたいですね。

 さて今日は、公務員が、自らの応援する政党の選挙ポスターを配ったり、掲示板に貼ったりすることができるのでしょうか。この点を考える上で、猿払事件(最大判昭和49年11月6日裁判所ウェブサイト)について紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 ある郵便局員が、北海道猿払村にある鬼志別郵便局に勤務していました。当時の郵便局員は公務員という身分でした。その郵便局員は、労働組合協議会事務局長を務めていたのですが、ある日、労働組合協議会の決定に従って、日本社会党を支持する目的で、選挙用ポスターを公営掲示場に掲示したり、他の支援者にポスターの掲示を依頼していました。しかし、このような活動が国家公務員法に違反するとして起訴され、稚内簡易裁判所から罰金5000円の略式命令を言い渡されました。しかし、郵便局員はこれを不服として、旭川地方裁判所に訴えたのです。

【国家公務員法102条】
① 職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。
② 職員は、公選による公職の候補者となることができない。
③ 職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。

【国家公務員法111条の2】
 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
二 第102条第1項に規定する政治的行為の制限に違反した者

2 検察側の主張

 国家公務員法などで明確に政治活動が禁止されています。
 そもそも公務員が一政党に偏った活動を行うことで、その職務の執行に大きな影響があり、公務の公正な運営が害され、行政事務の継続性や安定性が害されるおそれが非常に強い。公務の中立性について、国民の信頼を裏切ることになるのだ。
 また、たとえ管理職でなかったとしても、管理職の上司の顔色をうかがって、政治的目的を持つ何らかの活動をして、昇進その他職員の地位に関して利益を得ようとするのなら、公務の公正さが害される恐れが非常に高いのだ。

3 被告人(郵便局員)の主張

 私の選挙活動は、いずれも勤務時間外に行っていましたので、まったく問題がないと思います。
 公務員の中でも、国の政策決定に関わる職務を担当する者や直接公権力を行使できる者、行政上の裁量権を有する者は、政治活動が禁止されるべきだが、私のような管理職ではなく、職務に全く裁量の余地がない職員には、政治的活動が認められるべきだと思いま

す。
 というのも、憲法21条に表現の自由に由来する政治的活動を行う国民の権利があり、国家公務員であったとしても、政治的活動の制約は必要最小限でなければならないと思うからです。

4 最高裁判所大法廷判決

 行政の中立的運営が確保され、これに対する国民の信頼が維持されることは、憲法の要請にかなうものであり、公務員の政治的中立性が維持されることは、国民全体の重要な利益にほかならないというべきである。したがつて、公務員の政治的中立性を損うおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは、それが合理的で必要やむをえない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところであるといわなければならない。よって、郵便局員を罰金5000円に処する。

5 猿払基準

 第一審の旭川地方裁判所の判決では、中山和久早稲田大学教授、芦部信喜(あしべのぶよし)東大教授などが専門家として鑑定意見書を提出し、無罪判決に導いたとされています。

 しかし最高裁は、公務員の政治的活動の禁止目的が正当なものであり、政治的活動と禁止目的との間に合理的な関連性があり、政治的活動を禁止することによって得られる利益が失われる利益に比べて重大なものである場合には公務員の政治的活動の制約が認められると判断しています。

 公務員が選挙の手伝いなどをする際には、十分に気をつける必要があるでしょうね。

 では、今日はこの辺で、また。


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