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こんにちは。

 「俺は夢を買うんだ!」という宝くじですが、3億円をもらえる確率が1000万分の1だと仮定すると、期待値は3億÷1000万円=30円、他の2等や3等を加えても140円となります。これは、「コインを空に放り投げて裏表を当てたら280円あげるよ」というゲームと同じ期待値になんですね。

 さて、今日はみんなでお金を出しあって宝くじを買ったことで問題となった「宝くじ事件」(盛岡地判昭和57年4月30日判例タイムズ469号210頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 岩手県に住んでいる立花、簗部、坪井、浪岡は、1人3000円ずつ出しあって年末ジャンボ宝くじ(1人10枚分)をまとめて買うことにしました。浪岡が東京の知人に送金して購入を頼むことになったのですが、このときに浪岡は、3人に内緒で3000円を追加し、知人には「184040番~184089番」まで50枚を連番で買ってもらいました。すると、184041番が2等の1000万円に当選したことから、立花たち3名が浪岡に対して、それぞれ200万円の支払いを求めて提訴しました。

2 立花たち3名の主張

 俺たちは、浪岡が3000円を足して50枚の宝くじを一括で購入したことを一切聞かされていなかった。そうすると、当選した宝くじは、俺たちで共同して購入した分か、浪岡が単独で購入した分かわからないので、1000万円を出資金の割合に応じて分配すべきである。よって、立花、簗部、坪井にそれぞれ200万円の支払いを求める。

3 浪岡の主張

 おれの東京の友人に依頼して購入した宝くじ50枚のうち、「184040番~184049番」までの10枚について、おれの個人の購入分としてちゃんと区別しており、共同で買った40枚は坪井に示して交付したところ、坪井はおれに保管を依頼して、返却してきたのだ。この時点で、共同で購入した分はすでに特定されているので、当選した184041番の宝くじは私の個人購入分であることはあきらかだ。よって、賞金1000万円はおれ1人のものだ!

4 盛岡地方裁判所の判決

 50枚の宝くじについては、4人の共同購入分と浪岡個人の購入分とは観念的には区別できるが、実際にはいずれの10枚が浪岡個人の購入分であるかについては識別できないものであり、従って一括購入された段階において民法245条に定める動産の混和が生じたというべきであって、そうすると一括購入された50枚全部につき、4人の共有となるべきものである。
 そうすると50枚の宝くじについては、民法256条により共有物分割の協議が成立したような場合は別としてそうでないかぎりはいずれの者も一部の宝くじにつき、勝手に区別をしてそれを自らの所有物であると主張できない筋合のものである。
 よって、浪岡は立花らに3人に対し、それぞれ200万円を支払え。

5 宝くじの混和

 今回のケースで裁判所は、数人で共同で購入した宝くじの1枚が当選していたときに、共同で購入した分か個人で購入した分かが特定できない場合には、賞金は出資金の割合に応じて分配するべきだとしました。
 液体や固体が混ざり合って区別がつかなくなる混和が、宝くじでも起きたという非常に珍しい事件だったと思いますね。

では、今日はこの辺で、また。


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