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かに道楽vsかに将軍事件
こんにちは。
冬になると「と~れっと~れピーッチピチ、カニ料理~」の音楽が頭に流れてきて、無性にカニが食べたくなります。
さて今日は、「かに道楽」と「かに将軍」との間で、動くカニの看板が似ているということで争われた事件(大阪地判昭和62年5月27日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
巨大な動くカニ看板で有名な「かに道楽」を運営する会社は、同じように動くカニの看板を掲げている「かに将軍」の店舗を発見しました。そこで「かに道楽」は、「かに将軍」に対して、不正競争防止法2条1項2号の著名な「商品等表示」を模倣して営業を行うことに該当するとして、看板の使用の差止めと2億1081万円の損害賠償を求めました。
2 かに道楽の主張
かに道楽の動くカニの看板はなあ、看板としてカニをデデーンと誇張するためにめっちゃ巨大にしてな、動くはずのないゆでがにのハサミや肢、ほんで目をユーモラスに動かすところに大きな特徴があるんや。こんな動くカニの看板を店頭に掲げたんは、日本の中でも『かに道楽』が最初なんや。
かに道楽は、独創性のある大きな動くカニの看板を、自己の営業を示すもんとして一貫して使用してな、幅広い地域でテレビ、ラジオ、新聞などで広告宣伝活動を行ってきたんや。
そしたら「動くカニ看板」は、『かに道楽』を表す営業表示として、大阪、名古屋はもとより、全国的に有名になったんや。今では、カニ料理といえば「かに道楽」、「かに道楽」っちゅうたら大きな動く「カニの看板」、大きな動く「カニの看板」ちゅうたら、「かに道楽」と言われるまでになったんや。
ほんで、かに将軍の「動くカニの看板」を見たらな、一般のお客さんが「あ!、かに道楽や、こらあ食べなあかん!」と、勘違いさせるよって、実際に間違ごうたやつもいっぱいおるんや。しかも、店舗の外観・内装、箸袋、マッチ、灰皿、カニ型の鍋、チラシなんかも、うちと同じやんけ。ほんま、かに将軍は、わてらが長年にわたって築きあげた商売上の名声や信用を己のために利用しようっちゅう悪質な意図があるんは見え見えや。
3 かに将軍の主張
かに道楽の「動くカニ看板」の動きは、一般顧客の目から見て特殊な印象を与えるようなものではないし、ゆでガニの色彩をした松葉ガニを動かすという発想も平凡なアイデアにすぎない。したがって、かに道楽の「動くかに看板」はなんら独創性がなく、「かに料理専門店」を表示するものにすぎない。「かに道楽」が大阪の食いだおれというイメージであるのに対し、うちは「将軍」という名前のとおりの格式張った商号イメージを中心に、5店舗の広告宣伝活動を展開してきたのだ。
店名も単に札幌店でなく札幌本店と銘打ち、北海道が本店で、北海道の「かに将軍」という北海道イメージを中核とする北海道キャンペーン広告がうちの全ての店の広告宣伝の基本戦略となっている。それに伴ってうちが使用するパンフレツト・メニユー・包装紙・箸袋・マッチなどの図柄は、北海道のイメージや「タラバがに」を基本とするもので、かに道楽さんとは全く類似していない。
また、それぞれ「かに道楽」「かに将軍」の各商号を大きく、かつ明白に表示しているので、仮にカニの看板に類似性があったとしても、一般大衆である顧客からみて、両者の識別は極めて容易で、その識別が困難であるということはあり得ないと思います。
4 大阪地方裁判所の判決
「動くカニの看板」は、顧客にアピールするように、その動きを生きた「かに」の実際の動きとは異なるものにしてあり、肢と甲羅の大きさの比率や甲羅のいぼの大きさを誇張するなど、天然のカニそのままではなく独自の工夫を加えたものであることが認められる。
このような看板は現在でも、かに料理専門店で一般に使われているものではない。したがって、かに道楽の「動くカニの看板」は、不正競争防止法2条1項2号所定の商品等表示に該当する。
かに将軍が4店舗を開店する前から、「動くカニの看板」は「かに道楽」の営業表示として周知であり、強力な顧客吸引力を有している。一般の利用客の中には、かに将軍各店舗の屋上の看板の『かに将軍』の文字よりも、むしろ店舗正面に掲げられた「動くカニの看板」の方に注意を惹きつけられる者が多い。たとえ各店舗が『かに将軍』という商号であると認識しても、同じく「動くカニの看板」を掲げた『かに道楽』と営業上なんらかの密接な関係があるのではないかと、混同するおそれがある。
よって、かに将軍に対し、「動くカニ看板」の使用差し止めと合計5000万円の支払いを命じる。
5 看板のカニの肢が折れたことも
今回のケースでは、例を見ない奇抜性や新規性のあるカニの看板だけでなく、その動きも含めて「営業表示として周知されている」と認定されました。似たような看板を作成し、一般人が別の企業と間違えそうになる場合には注意が必要でしょう。また、かに道楽の看板はユニークである反面、負荷も大きく、以前に折れたカニの肢が落下して客にあたる事故も起きています。看板の管理にも十分な配慮が必要でしょうね。
では、今日はこの辺で、また。