ポパイネクタイ事件
こんにちは。
ポパイが登場する味の素のCMを見て、ポパイのガールフレンドの名前がオリーブ・オイルだったことと、ポパイのパイプがなくなって禁煙中なのかということが気になってしょうがない松下です。
さて、今日は「ポパイネクタイ事件」(最判平成9年7月17日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
キング フィーチャーズ シンジケート インコーポレーテッドは、昭和4年ごろからポパイのマンガについて著作権を有していました。その後、ポパイのマンガに関して商標権を有している株式会社松寺らが、ポパイのキャラクターの柄が入ったネクタイを販売していました(別の裁判で商標登録が無効とされます)。これを受けて、キング フィーチャーズは、著作権侵害を理由に3000万円の損害賠償と、その販売の差止めを求めました。
2 キング・フィーチャーズの主張
我々がポパイの著作権を有しており、勝手な複製は許されません。またポパイのマンガは、今も継続して描かれているので、第1回の連載から50年が経過していたとしても、著作権法で保護されるはずだ。だから、販売の差し止めを求めることができるはずだ。
3 グッズ販売会社らの主張
ポパイの著作権は、公表から50年が経過しているので、時効により消滅している。また、マンガの著作物について複製権の対象となるのは、表現されたマンガであって、キャラクターではない。キャラクターそのものは、抽象的な存在であって、思想又は感情が客観的に確知される媒介物を通じて表現されているものとはいえないはずだ。
4 最高裁判所の判決
(別の裁判で商標登録無効が確定したことを踏まえて)1話完結形式の連載漫画においては、登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。というのも、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということはできないからである。
ただし、ネクタイに描かれている絵は、第1回作品の主人公ポパイを描いたものであることを知り得るものであるから、ポパイの絵の複製に当たり、第1回作品の著作権を侵害するものというべきである。しかし、第1回作品については著作権が消滅しているので、使用を差し止めることができない。
5 抽象的なキャラクターそのものに著作権はない
2018年より、キャラクターの保護期間は、初回の登場から70年(改正前は50年)となっています。
やや複雑で回りくどい判決文ですが、今回の事件では、マンガやアニメなどのキャラクターが描かれたイラストについては著作権が成立しますが、それを離れたキャラクターという抽象的な概念(コンセプト)には著作権が成立しないと述べています。また、特定のコマに描かれたキャラクターと同じイラストでなくても、ポパイの特徴と酷似した絵を描けば著作権侵害となりますので、くれぐれも注意しましょう。
では、今日はこの辺で、また。