コメダ珈琲事件
こんにちは。
いつもコメダ珈琲の店に入ると「やっぱりココが落ち着くわ~」と、旅行から帰ってきたおかんが言いそうなセリフを吐いてしまいます。これには絶対に山小屋風の内装が関係しているはずだと、その秘密について血眼になって調べてみました。すると、通常の店では目に入ってくる木の量(木視率)が20%であるのに対して、コメダ珈琲では40%以上だったことを知り、誰かにドヤリングしようとたくらんでいる松下です(迷惑極まりない奴や)。
さて今日は、そのコメダ珈琲事件(東京地決平成28年12月19日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
株式会社ミノスケは、和歌山市内にコメダ珈琲のフランチャイズ店を出店したい旨をフランチャイザーのコメダ珈琲に伝えていました。コメダ珈琲は、すでに和歌山県内に別の会社がコメダ珈琲の店舗を開設していたため、その店の売上を優先するためにミノスケの申し出を断りました。すると、ミノスケはマサキ珈琲という名称で喫茶店を開設しました。
ところが、コメダ珈琲側に「マサキ珈琲は系列店ですか?」という問い合わせが多数寄せられたため、コメダ珈琲が調査したところ、マサキ珈琲の外観を見て「うちと同じや!」となりました。コメダ珈琲は、ミノスケに対して不正競争防止法に基づいて同じような店舗の外観を使用しないように、差止めを求めたのです。
【不正競争防止法2条1項1号】
この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
1 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
【不正競争防止法3条1項】
不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 コメダ珈琲の主張
三角屋根が特徴の店の外観や、ボックス席の配置、メニューまでが、まんまパクリです。店舗のデザインが「顕著な特徴を有していること」と「広く認識されていること」があれば、不正競争防止法の商品等表示に該当するので、差止が可能となるはずです。
3 マサキ珈琲の主張
三角屋根や出窓、レンガ壁などは通常用いられる建築方法にすぎないので、コメダのデザインに見られる建築物の一般的な外観をコメダに独占させるべきではない。よって、差止は認められません。
4 東京地方裁判所の判決
東京地方裁判所の裁判長は「①店舗の外観が客観的に他の同種店舗の外観とは異なる顕著な特徴を有しており、②当該外観が特定の事業者(その包括承継人を含む。)によって継続的・独占的に使用された期間の長さや、当該外観を含む営業の態様等に関する宣伝の状況などに照らし、需要者において当該外観を有する店舗における営業が特定の事業者の出所を表示するものとして広く認識されるに至ったと認められる場合には、店舗の外観全体が特定の営業主体を識別する(出所を表示する)営業表示性を獲得し、不競法2条1項1号及び2号にいう『商品等表示』に該当するというべきである。
コメダ珈琲の外観は、他の店との十分な識別力があり、また需要者の間でも広く認識されているので、マサキ珈琲の店舗の使用を禁止する」と判断しました。
5 メニューの類似
今回の事件では、メニューまでそっくりだったのですが、裁判所はメニューの差し止めまでは認めていませんでした。見た目は同じだったとしても、味は簡単にマネができないということかもしれませんね。
では、今日はこの辺で、また。
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