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尼崎日産自動車事件

こんにちは。

 日産といえば、小回りが利くダットサンを思い出すのですが、司法試験受験者の間ではダットサン民法が人気だったことを思い出しますね。

 さて今日は、整備工場などのサブディーラーから新車を購入した人が、ディーラーとサブディーラーとの間で結ばれた所有権留保特約により購入した車を失うのかどうかを考える上で、「尼崎日産自動車事件」(最判昭和50年2月28日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。


1 どんな事件だったのか

 自動車ディーラーの尼崎日産自動車は、サブディーラーの株式会社国際自動車整備工場に、尼崎日産自動車が所有者のままで、自動車をユーザーに販売させていました。あるとき、景山賢政が国際自動車整備工場から、尼崎日産自動車が所有するダットサンを購入し、代金82万円を支払ってその引き渡しを受けました。その後、尼崎日産自動車は、景山氏のために車検手続、自動車税、自動車収得税の納付手続、車庫証明手続などを代行していました。景山がダットサンを購入した日から8日後に、尼崎日産自動車は国際自動車にそのダットサンを約71万円、月々5万1100円の分割払いで売却し、代金完済までダットサンの所有権を留保するとの契約を結びました。ところが、国際自動車が3か月分の支払を滞納したことから、尼崎日産自動車は国際自動車との売買契約を解除し、留保していた所有権に基づき景山氏に対してダットサンの引き渡しを求めて提訴しました。

2 最高裁判所の判決

 尼崎日産自動車は、デイーラーとして、サブデイーラーである国際自動車整備工場が本件自動車をユーザーである景山氏に販売するについては、前述のとおりその売買契約の履行に協力しておきながら、その後国際自動車との間で締結した本件自動車の所有権留保特約付売買について代金の完済を受けないからといって、すでに代金を完済して自動車の引渡しを受けた景山氏に対し、留保された所有権に基づいてその引渡しを求めるものであり、右引渡請求は、本来尼崎日産自動車においてサブデイーラーである国際自動車に対してみずから負担すべき代金回収不能の危険をユーザーである景山氏に転嫁しようとするものであり、自己の利益のために代金を完済した景山氏に不測の損害を蒙らせるものであつて、権利の濫用として許されないものと解するを相当とする。
 以上のとおりであるから、右と同旨の原審の判断は正当として是認すべきであり、 論旨は採用することができない。よって、尼崎日産自動車の上告を棄却する。

3 権利濫用の禁止

 今回のケースで裁判所は、自動車のサブディーラーから自動車を購入したユーザーに対して、ディーラーがサブディーラーとの間の自動車販売契約で取り決めた所有権留保特約に基づきその自動車の引渡しを請求することは権利の濫用だとしました。
 尼崎日産自動車が売買に積極的に関与しておきながら、代金回収ができなくなったとたんに手のひらを返したかのようにダットサンの引き渡しを求めたことが権利濫用に当たるとされましたので、車の販売ではこの点について十分に注意する必要があるでしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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