吹き替え感
完全に引っ越して早2ヶ月。この家に住んでからというもの、テレビに背を向けて座る椅子が私の定位置となっている。つまり普通にこの席に座っていると、テレビの画面は見えず音だけの状態になる。
私自身、テレビは見ないしその位置でいいのだけれども。
ある日の晩御飯に不思議なことが起こった。
皆で晩御飯を食べだした時。夫が録画していた何かを再生した。それ自体はよくあることだし、私も音だけは聞こえてくるので最初は「何の番組だろう」とそれなりに注意を向けて聞いていたのだけれど。
登場人物たちが話す声がする。それによって物語が進んでいく。実写かアニメかわからないけど、とにかく何かお話系だな。いやでも何かこれ。みんな吹き替えっぽいね??
そこに生身の人間を感じないと言えばいいのだろうか。人が動いて、その最中に声を出している感じがしない。その場に立つ人の身体の中から声が出てきている感じがしない。目の前に動く映像があって、それに合わせて声を出している感じ。だから「吹き替えっぽい」と感じたのだろう。
こんなことを感じたのは初めてで、自分の感覚に驚いた。
「え、吹き替えの何か?」
と夫に聞けば
「アニメだよ」
という答えで。実際、振り返ってみれば確かにアニメだった。そして海外で作られた作品の吹き替えというわけでもないみたいで、映像自体、最初から日本で作られたものっぽい(原作は海外の人?っぽいけれども)。
私は演技に詳しくないので、「その人たちの演技がどうだったか」については何も言えない。少なくとも「棒読みだな」と感じたわけではないし、おそらく「上手さ」はそんなに重要じゃない気がする。
私が感じた一番の違和感は、さっきも書いたけれども「身体と声の違い」なのだ。「何だか身体と声が合っていない」「その身体からこの声が出ている感じがしない」そういう違和感。
でも、「身体から声が出ていない」と言っても、私自身は映像を見ていないわけで。どんな見た目の人がどういう場面で話しているのか、視覚では一切見ていないのである。
でも、「映像に合わせて声だけ出してるな」と感じられる。これって一体どこをどう判断してそう感じたのだろうか。
引っ越して2ヶ月。これまで何度も何度も、音声だけを聞いてきたのである。アニメだって洋画だっていろいろ流れていて、その音声だけを聞いてきたのである。
でも、ここまで「え??」と思うことはなかった。
今までは、元々「アニメだ」と知っているものだったり、ちらっと映像を見て少なくとも「こういうものだ」というのをわかった上で聞いていたり。そういうことばかりで、本当に何の情報もなく「ただ音だけを聞いている」ということが無かったのかもしれないけれども。
声をあてる時、「そこにいる人が本当に身体の中から声を出すように」できることが、「技術的な上手さ」で、そこがあんまり上手くいってなかった作品なのかもしれないけれども。
とにかくあの感覚は不思議で、自分でも驚いたのであった。
すごく感覚的なことだから言葉で伝えられた気がしないけれども、書いておきたかったので。意味不明だったらすみません。
これから音だけ聞く時は、ちょっとその辺を意識してみようかなぁと思う。
ではまた明日。