競争心

大人になって丸くなったが。小さい頃の私は、とてつもなく負けず嫌いだった。

歳上のお兄ちゃん、お姉ちゃんができているから自分もできなければ!と毎日練習しにいって鉄棒のだるま回りをマスターしてみたり。

漢字や計算テストで1番になれなかったからと心底悔しがって泣いてみたり。

硬筆で賞状をもらったが、銅賞。こんなもんいらん!とビリビリに破いて捨ててみたり。

自他共に認める、気性の荒い負けず嫌いだった。

今でも恐らく根本は変わっていないのだが。自分が一番になれない分野なんてそこら中にあるし、むしろ一番になれないものしかないし、上には上がいるもんだし。ある程度努力はするし上に行きたい気持ちはあるけれど、この辺が落し所だよなぁという現実を見る大人になってしまった。

負けて悔しいと思うのは、決して悪いことではない。負けず嫌いがあったからこそ自分なりに努力をしたし、それによって身につくことも沢山あった。気性の荒さは恐らく(まず間違いなく)周りに迷惑をかけたが、その時の私は自分の中の荒れ狂うものをコントロールする術を身に着けていなかったし、翻弄されるしかなかったのである。それで全てを正当化できるとは思わないが、大人になるにつれ落ち着いたので、とりあえず良かったなと思ってもらいたい(特に両親、育てるの大変だったと思う。ごめんなさい)。

さて、そんな私も子どもを産み。私の子どもなのでどれだけ負けず嫌いな子なのかと構えていたのだが。我が子、傍から見る限り、そこまで負けず嫌いじゃない。競争心があまり高くない。

兄弟がいないというのも大きいのかもしれないが、お菓子を食べていて「それちょうだい」と私が言えば、普通に「どうぞ」と渡してくれる。子どもってもっとこう、1つでも多く自分の陣地に持っていき、食べる生き物ではないのかな?

すごろくをしていて親である私たちが先にゴールしても、一緒に「やったー」と喜んでくれたりする。「よーし、ぼくもがんばってゴールするぞー」と言う。そこはこう、ほら、「なんで先にゴールするの!ギャー!」とか、一式ひっくり返して「もう一回!」って勝つまでやるとか、そういうの、あるじゃん?

穏やか、優しいと言えば聞こえはいいが、私からしたらこの子、負けん気というか競争心がないなぁと、思っていた。それはそれでいいことだけれど、あまりに無いのも、今より上を目指す気持ちに繋がらないのではないかなと少し心配していた。

しかし4歳になり。最近になって。

神経衰弱をしていて夫が先に合うカードを見つけると「ぼくがさき!」と怒るようになってきた。負けが続くと癇癪を起こして札をぐしゃぐしゃにかき混ぜるようになってきた。

登園する時に同じクラスの子が先に向かっているのが見えると、「はやく!○○くんいっちゃうよー!」と言うようになってきた。向こうは全く気にしていないのだが、息子が一人で競争心を持ち、その子よりも先に教室に入りたいらしい。

小さなこと。くだらないこと。仕方なのないこと。大人からしたら大したことではないのだけれど、息子は「キー!」となっている。それは、私が子どもの頃よりは控えめだけれど、子どもによくある姿で。あぁこの子も人並みに競争心があるんだなぁと最近思えてきた。

負けず嫌いとか競争心とか。そういうものって、4歳くらいにならないと開花しないものなのだろうか?

最近、じゃんけんのルールもようやくちゃんとわかったようで、「パーとグーならパーの勝ちだね」と言ったりするのである。ルールがわかってきた。勝ち負けという概念がわかってきた。だからこそ、「負けたくない」「勝ちたい」という気持ちが出てきたのかなぁと思う。

子どもの感情が芽生える年齢や段階を勉強したわけではないので、これが平均より遅いのか早いのかはわからないが。大人にとってあって当たり前と思う感情もまた、学習から作られていくのかもしれないな。

まぁ何にしても、負けん気があるのは大変結構。どんどん負けて、ギャー!となって、勝つために考えて努力をしていくといいよ。

しかし息子が競争心を発揮しだして、物事が穏やかに進まなくなってきたのもまた事実。息子程度でこれなのだ。私の時は本当に大変だっただろう。改めて両親、特に母にはあの時はごめんなさいと言いたいな。


ではまた明日。