サンダルで走るメキシコ女性ランナーを追ったドキュメンタリー「ロレーナ」
メキシコ北部チワワ州のタラウマ族(ララムリ)という先住民族の人たちは足が速いと言われている。しかし、実際にサンダルで、しかも長いふんわりした民族衣装のスカートを履いた女性が、100kmもの山岳コースを走るレースで優勝した話を初めて聞いた時は、とても驚いたことを覚えている。その女性が主人公になった短編ドキュメンタリー「ロレーナ サンダル履きのランナー」が日本のNetfrixでも公開されていることを知り視聴した。
(ちなみに「ララムリ族」とも呼ばれるタラウマラ族の人たちは、もともとタラウマラ語で裸足のランナーという意味を持つ「ララムリ」という言葉が、タラウマラ族の別称となったそう。)
ロレーナは当時22歳。家族以外の人とはほぼ接触の無いような広大な美しい大自然の中で、大家族とヤギと自給自足をしながら暮らしている。具体的な説明はなかったが、映像を見る限り彼らの家はかなり標高の高い山中で、人里離れた場所にある。
レース前後のインタビューや、ファンの人たちからの呼びかけや写真撮影のお願いも、笑顔ひとつ見せないロレーナ。彼女が走る理由は、自身も言う通りお金のためだけなのだろうか?
兄妹たちと山を走り回っている時の屈託の無い笑顔を見て、単純にそれだけが理由ではないのではないように感じた。走ると言うことが、彼女たちにとっては、日常のことで生活の一部。日々、家族と走りながら山を昇り降りし、飼っているヤギたちを追う姿はとても幸せそうなのだ。
有名になった彼女にランニングシューズを贈ってくれた人もいるようで、その立派そうなシューズをカメラに見せながら、
「この靴を履いている人たちはみんな私の後ろを走っている」
と、普段寡黙な彼女の口から出てきたこの言葉が、とても印象的だった。この時も、少し笑顔が見えたような気がした。
どんなに周りに騒がれようと、彼女は自分自身の力を信じる強い女性なのであろう。
チワワの大自然の中で、花柄プリントにステッチが施された可愛いスカートをヒラヒラさせながら、サンダルで爽快に走る彼女の直向きな姿は、とても逞しくて美しい。