次の舞台はパリ。「私たちの」なでしこジャパンを振り返る
スペインの初優勝で幕を下ろした今回の女子ワールドカップ。
なでしこジャパンはスウェーデンに敗れベスト8敗退となった。悔しい結果とはなったが、それまでの試合内容は見事なものだった。
この躍進を大会前から想像していたサッカーファンはどれぐらいいただろうか。
この大会においてジャイアントキリングとは言わずともサプライズと呼べるチームだったと思う。
大会前の女子ワールドカップの話題と言えば放映権が大会直前に決まらず、クラファンをするとかどちらかと言えばネガティブな反応が多かったと感じた。私は直前になればどこかしら放送はあるものだと楽観視していたが。
個人的には、今大会のために発表されたアウェイユニフォームのデザインがどストライクで記事を書くくらいお気に入りだったので、試合で着用されるかということを気になっていた。(ベスト16のノルウェー戦で着用された。)
紆余曲折があり最終的には全試合をFIFA+で配信、日本戦をNHKで放送されることで落ち着いた。
私のなでしこジャパンの記憶は東京五輪の試合で止まっていたので、優勝候補スペインや大会前に強豪ドイツを破ったザンビア、コスタリカと同組になったグループでは苦戦を強いられることになるのではと思っていた。
だが大会始まるとその不安は杞憂に過ぎなかった。
ザンビア戦をゴールラッシュで白星発進し、メンバーを入れ替え臨んだコスタリカ戦も勝利。第3戦では決定機を見事に決めきりスペイン相手に4-0で勝利したのは衝撃を受けた。
この大会で優勝を果たしたスペイン相手に勝利したのは日本だけだ。
ワールドカップ優勝からはや12年。
なでしこジャパンはリードする立場から再び世界を追いかける立ち位置になったと勝手に思っていたが、選手の実力を発揮すれば世界トップクラスと充分張り合えることを証明してくれた。
とても嬉しいことである。
大会通して長谷川唯のプレーは素晴らしかった。必要な局面に常に顔を出し、思わず「おお!」と唸るモドリッチを彷彿とさせるクオリティが高いプレーを披露した。この選手のプレーを観るためにチケット代を払ってスタジアムに足を運びたいと思わせてくれるプレーヤーだ。長谷川選手が所属するマンチェスターシティの試合も観たいと思った。
準々決勝で対戦したスウェーデンはフィジカル面では大きな差を感じたし強かったが、失点シーンは共にセットプレーで特に2点目のVARが介入しハンドになったシーンはルール上ハンドは取らない判定になってもおかしくなかった。
後半のバーを叩いたシーンが入っていれば前半から積極的にシュートを打てていればなどタラレバは尽きないが、勝負の世界はいつだってそういうものだ。
しかしひとつ思うのはスウェーデン戦は祝日の夕方キックオフの試合でサッカーを普段見ない層の目に触れたであろうこの試合に勝っていればワイドショーなどに取り上げられて、女子サッカーの注目度がよりアップするチャンスを逃したというのは残念である。
そう考えると先に行われた男子ワールドカップのクロアチア戦とリンクする部分も多く、男女とも世界への課題を実感できる試合だった。
次のワールドカップは4年後だが来年にはパリ五輪が控えている。1年間でどのような進化を遂げることができるか。
私はパリ五輪におけるなでしこはポジティブな部分を多く感じている。
例年の通りならオリンピックはワールドカップより短期決戦になるだろう。
登録メンバーは23人以下の可能性があるが、今大会で見せたグループステージでガラッとメンバーを入れ替えるサッカーが生きると思うので池田監督のもと1年間の間にアップデートしてもらいたい。
そしてさらに重要なのはオリンピックまでの間に新規のファンをどれくらい取り込めるかどうかという点だ。ワールドカップで興味を持った人を1年後も関心を持ち続けてもらうのが大変であることはカタールワールドカップ後のJリーグでも感じるところだ。
今大会のなでしこジャパンは14人のWEリーグ所属の選手が選出された。WEリーグの露出が思うようにいっていないことはサッカーファンの中では周知の事実だが、これから改善できるか。
クラブごとではなく協会としてバックアップしてJリーグと連動して集客につなげていくことは必須だと思う。
女子サッカーも近年はヨーロッパのクラブのパワーバランスが上昇している印象を受ける。欧州リーグのカップ戦では7万人以上動員する試合も珍しくない。世界的なムーブメントとして女子サッカーの権威が向上していると感じる。
現状では日本とは大きな差がある。しかしWEリーグは2021年からスタートした新しいリーグだ。戦略によっては大きく化ける可能性を秘めている。(というかあって欲しい)
既に取り組んでいると推測するが、年俸が高い選手の年俸の一部をリーグが補助金を出してヨーロッパでプレーする海外選手の獲得を行うことができればリーグのレベルアップに繋がると思う。
実現するにはスポンサーの問題などクリアしないといけないだろうがワールドカップ優勝チームの選手やバロンドール候補に上がった選手を獲得ができればよりスタジアムに行ってみようと思う人が増えると思う。
先日女子アジアチャンピオンズリーグの発足が発表された。
近い将来FIFAは女子のクラブワールドカップも開催するだろう。
WEリーグを世界一のリーグと証明する環境は整うはずだ。
そしてフィジカル面、技術面を日本代表候補の選手が学ぶことができれば日本代表の底上げにも繋がる手掛かりになる。
26日からリーグ戦新シーズンに先駆け開催されるWEリーグカップだが、YouTubeで配信されることが発表された。私はまず最初の足がかりとして配信を観てスタジアムにも足を運ぶ予定でいる。
そしてWEリーグの発展を実現するには代表チームがタイトルを取ることが極めて重要だ。
なでしこジャパンのこれからのスケジュールは9月に親善試合を行いアジア大会、パリ五輪予選と大事な試合が続く。
是非とも来年には国立競技場で試合を開催して、オリンピックメダル獲得に向けて機運を高めたいところだ。
東京五輪の時には考えられなかったほど今のなでしこジャパンは希望に満ちている。
ワールドカップでの平均年齢は24歳と32チーム中4番目に若いメンバーだった。スウェーデン戦後に丸山桂里奈さんが語っていたように、アンダーカテゴリーの選手たちも国際舞台で結果を残している。トップチーム入りに名乗りをあげる選手が今後出てくるであろう。これからの伸び代に期待したい。
こうして「わたしたちの日本代表」をタイトルを期待して応援できることを誇りに思う。
頑張れなでしこジャパン