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絵本日記DAY3 みどりな絵本
本棚から自然に手にとる本。その時の自分が無意識に欲しているものを知る、ひとつの指標になるのがおもしろい。今日は、集まってきた3冊の緑の絵本を書き溜めます。
①はちうえはぼくにまかせて
原題は「The plant sitter」。ちょっとおせっかいな植物係、って感じかな。
トミーは大の植物好き。
お父さんの仕事が忙しくて、夏休みだというのにどこへもバケーションに行けない。暇をもてあまし、旅行へ行く近所の人たちの鉢植えをあずかって世話することを思いつく。
リビングはもちろん、階段一段ずつにも、キッチンにも、バスルームにだって。
家の中は観葉植物だらけ。
トミーは、日本語でいえばオタクだね。
『トミーは としょかんで、しょくぶつのほんを かたっぱしから ひらいて みました。そして、やっと みたいとおもっていたほんを みつけました。』
みたいと思う植物の本がすでにあったということだよね。そして本の中に吸いまれちゃんうんじゃないかというくらいに顔を近づけて、調べものをするトミー。本のタイトルは「あなたの しょくぶつ おおきすぎませんか」、です。
それから園芸店にはしり、育ちすぎた植物たちの枝を切り、その枝を小さなポットに新たに植える。このときの、いきいきとしたトミーの表情。
この男の子と出会ってから、我が家の観葉植物の名前や育て方を意識するようになった。この夏にこんもりと伸びたポトスをちょきんと切って、ガラスの空き瓶に水挿しもしてみた。
食事を忘れるくらい何かに夢中になったり、誰になんと言われようと止められない情熱や衝動をこころに秘めているということの喜び。NERDな時間を過ごすことの悦び。
トミーくんとは良いお友達になれそうだ。
作 ジーン・ジオン 絵 マーガレット・ブロイ・グレアム
訳 もり ひさし 1981年8月初版 株式会社ペンギン館
②わにわにのごちそう
ぎろりと光る黄色い目、ごつごつぬらりとした皮膚の質感。アニメ化されたワニではなく、爬虫類の近寄りがたさや薄気味悪さを版画によってリアルに描いているところがこの絵本の素晴らしさだ。
こわい。このわにわに、こわいんです。こわいんだけど、でもこの怖いものみたさとワイルドさに子どもたちは魅了されている。まるでじっとりとしたわにの気配を感じようとしているみたいに、見入っている。
わになので、家の中はずりずりと這って移動します。見慣れた日本の茶の間に、濃い緑色の生き物が這いつくばっている不気味さ、異色さ。これが、たのしい。
お腹の空いたわにわには、冷蔵庫から「にく」を取り出して焼きます。口の先からエプロンもかけて。なぜか七面鳥。わになのに。
せっかくセットしたナイフとフォークは放り投げて、『がふっ がふっ がふっ むちゃ むちゃ むちゃ』と手づかみで肉を喰いちぎる。わにだものね。
そしてテーブルから どかり、と床に降り
『ずり づづづ ずり づづづ』と台所から出ていく。四つ這いで、重たそうな太いしっぽがづづづ、と後からゆっくりついてくる。
同シリーズの「わにわにのおふろ」もこわい。
お風呂場にわにが這っているなんて想像しただけでぞっとするでしょ。
でもこのわにわにの、決して上品とは言えないが本能あふれる日常が、なんともファニーで憎めない。そして気づくと、このわにわにがクセになっているのだ。
小風 さち ぶん 山口 マオ え 福音館書店
③旅の絵本
できることなら、私は安野光雅さんの孫になりたいです。
安野さんの英知と優しさの溢れる絵本が、大好きです。
それでこの「旅の絵本」シリーズは、本の扉を開くだけで美しい田園風景のひろがるイギリスにも、パリの蚤の市にも行かれる。
ここにいながらにして、どこへでもいかれることこそが、絵本をひらくことの醍醐味。この「旅の絵本」シリーズは、それを心ゆくまで叶えてくれる絵本です。
文字はありません。どこの建物をのぞいても、だれのおしゃべりを聞いてもかまわない。あなたは自由気ままに、世界中の旅ができる。
そしてこの絵本のおたのしみは、あちこちに安野さんの宝物のようなユーモアが散りばめられていること。だからこの絵本を読むことは、宝さがしをすることでもある。ほら、ロンドンにはピーターパンも、くまのプーも隠れているよ。
秋の夜長に、じっくりと旅してほしい絵本です。
安野 光雅 福音館書店