絵本日記DAY2 ごはん、かさ、スイカのプール
9月29日(日) 雨。今日も紫波町図書館から。
図書館に行く前にラーメンが食べたくなって、産直に併設されている食堂に並ぶ。
お昼時だったので家族連れで賑わっていて、うーん、また今度にしようかなぁと思っていたら。券売機の前で並ぶ4人と3人、それぞれ二家族の方たちが、二人掛けの席しか空いてないからお先にどうぞ、と声をかけてくださった。
7人のお顔が一斉に振り返ってこちらを見ている。私がまごまごしていると、おじいちゃまと呼びたくなるような素敵な男性が「回転率を上げましょう」と朗らかに言ってくれた。
ほっこり嬉しい出来事でした。産直も図書館もよし、さらに来ているお客さんまで優しいなんて、ますます好きになりました紫波オガール。
それでは今日もはじめます。
①ごはん
平置きにされていたこの絵本、私には光って見えました。この絵本をひらくのは、もはや本能です。
この絵本のすばらしいところ。
『たきこみごはん』『がいこくごはん』『おむすび』『おすし』『かけごはん』『どんぶりもの』『おかゆ』というカテゴリー分けがよい。
さらに、その中の選ばれしごはんたちが、もっとよい。
たとえば、祖母を思い出すまめごはんにしょうがごはん。うっとりホワイトソースのかかったクリームライスや色鮮やかなパエリア。のりむすびの海苔はしっとりすっぽりごはんを包みこんでいる。てんむすのてっぺんから見えている海老天は、サクサクで揚げたてに違いない。おすしのページのつやつやのいくらやバッテラ、今すぐ頬張りたい。
お茶漬けやおかゆにもこんなに種類があったのね。リゾットとおかゆの違いにまで言及されていて、勉強になります。。
輝かしいごはんオールスターズが、やさしくもお米に誠実なタッチで丁寧に描かれています。
巻末についているごはんの紹介文がこれまた秀逸。
・どんぶりものは、食べはじめたらいっきにさいごまで食べすすみたい、力みなぎるごはん
・暑いときでも寒い季節でも、食欲がないときだっておちゃづけならさらさらと食べられる
「さらさら」という形容詞はお茶漬けのためのものだ、と思っている。
この画集のような図鑑のようなおいしい絵本、秋の夜長にずっと眺めていたい。
平野恵理子 作 2015年4月10日発行 発行所 株式会社福音館書店
②かさ
今日は雨。雨の日に図書館にこもるのってたまらなく好き。
この絵本には、文字はありません。風景も人も白黒で描かれていて、女の子のもつ傘だけがぱっと鮮やかな朱色。
こういう絵だけでストーリーを想像したり、女の子の気持ちを考えることはとてもたのしい。
「ここのドーナツ屋さんのドーナツ食べてみたいなぁ」とか、「世界ぜんぶがずぶ濡れだわ」とかね。
お父さんに傘を届けるために、一人で駅へと歩く女の子。ずっと前、小学生の男の子(4年生だったと思う)と学童クラブでこの絵本を見た。
「これは盛岡の街を描いた絵本だね」と、その男の子は言った。
たしかに、あの公園や、あの池や、あの交差点、、、。
はっきりとモデルの地が記されているわけではないのだけれど、こどもは傘を届ける女の子になって、ざあざあ雨の降る絵本の中を歩いている。
だから、自分の街を歩いていると思うことは、ごく自然なことなのだろう。
作・絵 太田大八 発行所/文研出版 1975年2月20日発行
③すいかのプール
もう夏はとっくにいなくなってしまったようだけど、私は今この絵本と出会ってしまった。
私はかなりのすいか好きで、暑い夏に体を冷やしてくれるしゃりしゃりとしたあの薄赤い味も、赤と黒と緑の柄のコントラストにもめっぽう弱く、手ぬぐいやスイカのビーズバッグまで持っている。
で、すいかのプール。
プールの管理人と思しき麦わら帽子のおじいちゃんが、おおきなすいかの断面にはしごでよじ登っていきます。
そして、さっくさっく と歩いて すぽっ と種を抜き、その種の形のままの穴に すとん と体を沈めるのです。そして一言、「うーむ、きもちいい」。
ここで、私の体は一気に冷えました。
じりじりと照りつける太陽から、すいかの水分たっぷりの果実の中にすっぽりと逃げられたら、どんなにひんやり気持ちいいことでしょう。
そして村のこどもたちも次から次へとすいかプールへ。
さっく さっく さっく さっく とすいかプールの水面を歩いていく。皮で作ったすべり台では、さくらんぼ柄の水着を着たおばあちゃんがおおはしゃぎ。
色鉛筆で丁寧に描かれたすいかの赤も、「しゃぽん」「さっく」「すとん」というサ行の音も、小気味よくて最高です。
アンニョン・タル 作 斎藤真理子 訳 発行所 岩波書店 2018年7月19日発行