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君たち、みんな同じ顔してるけど、どうやってお互いの事、わかるの?

10年以上も昔の話。
私は、あるボランティアプログラムで、2年ほどブラジルに住んでいた事がある。

住んでいた町は、日系ブラジル人が多く住む小さな町だった。みんな温かくて、人に恵まれていたけれど、一人暮らしで、外交的な性格でもなかった私は、年末や夏休みなど、世間が長い休暇に入ると、時間を持て余した。小さな町には、本屋も映画館もデパートも勿論なかった。

ある年の夏休み、同じプログラムに参加した同期の仲間数人と、ブラジルのどこだったか、町の名前は忘れたけど、黒人の多い地方の町で落ち合った。 

そして、お互いの近況をワイワイ話しながら、街の中心部のレストランに向かって、歩いていたんだと思う。すると、数人のブラジル人の男の子たちとすれ違う。みんな素朴な感じの黒人の男の子。

そして、そのうちの1人が、『日本人?』と話しかけてきた。

怖い感じもなかったので、なんとなく話していると、突如、
『ところで君たち、みんな,同じ顔をしてるけど、どうやってお互いのことわかるの?』と笑いながら言ってきた。

多少馬鹿にされている気もするが、話し方から、悪意のないジョークなんだろうといいふうにとった。だが、我々からしてみたら、彼らのグループもだいたい同じ顔に見える。

それで、『いやいや、それはあなた達の方でしょ?』と言い返すと、先ほどの彼が、これまた笑いながら、『え?俺たちは全然違うよ。』と言って、笑顔で手を振りながら、行ってしまった。

(ブラジルを旅していると、お国柄なのか、本当にたくさん話しかけられる。いろんなエピソードがあったけれど、この時の会話も、なんだかブラジル人らしくて、やけに覚えている。)

彼からしたら、アジア人の20代の女子グループの我々は,大体、似たような顔に見えたのは本当だったのだろう。見分けがつかないは、冗談だとしても。

というのは、自分も似たような経験をしていたからだ。

それは大学を卒業したくらいの頃だろうか。
ブラジルに行く前の話。

ある日、都内の本屋で、わたしは黒人の男の人と出会った。アメリカ人だった。どうやって会話が始まったのかは覚えていない。でも、私は辿々しい英語でその人と話していて、とても楽しかった。

数分、2人で立ち話をした後、彼から、もっと話したいので、この後一緒にご飯でも食べないか、と誘われた。

私は素直に嬉しい、行きたい、と思った。

が、しかし、私は親ゆずりの心配性である。会ったばかりのよく知らない男の人と2人で、夕ご飯を食べることに、躊躇していた。でも、もっと話したい気持ちも強かった。

で、数秒悩んだあと、私は、その時仲良しだった韓国人の友達を思い出し、その子を呼んでもいいか?と彼に尋ねた。とにかく、2人きり、という状況を避けたかったからだ。

すると、彼の顔からすっと笑顔が消え、『残念だけど、時間を無駄にしたくないんだ』と言って、彼はどこかに行ってしまった。

『ええええええ。』(心の声)

てか、それはただのナンパだったのかもしれないが、恋愛慣れしていない私は、彼にまた会いたいと思ってしまった。

それで、本屋で話した時、彼が住んでいる町について話してくれたのを思い出す。
また会いたい。そうだ、彼の町に行ってみよう。

その次の週、時間だけは沢山ある私は、彼の住む町の駅まで行ってみた。

田舎出身の私は、安易にも、黒人の彼なら、日本の町では目立って、すぐ見つけられるだろうと思っていた。待っている間、ドキドキしながら、駅から出てくる人、駅に向かう人をずっと目で追う。

ここから予想外のことが起きる。
東京の郊外にあるその町には、沢山の外国籍らしき人達が歩いていた。
白人もアジア人もそして黒人も。。。
なんなら、黒人の人は割とたくさん歩いていた。

!!!??  (え!!こ、こんなに。。。)

で、さっきのブラジル人の男の子じゃないけど、わたしも、黒人の男の人が、みんな同じ顔に見えてしまい、しまいには、もう一度、会いたかった彼が、どんな顔だったのか、もう完全にわからなくなっていた事に愕然とした。。 

後に、その町には留学生をたくさん受け入れている大学があった事を知る。

なわけで、私は、その後,ブラジルに行き、
君たちみんな同じ顔をしているね、と言われても、まったく気にならなかったのだ。

ほんと、おっしゃる通りです、と内心、諦めというか、納得していた。

✳︎もちろん、仕事やプライベートで長く一緒にいる人の顔はわかります。ただ、一回程度会ったくらいだと、こうなっちゃう可能性が高いです。私の場合。

続く




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