10 路面電車のある街 ♯1 都電荒川線
優しい老夫婦とチェルシー
子供のころ浅草橋から浅草方面に向かう都電の中で、品の良い老夫婦から明治のチェルシーをいただきました。
「これはね、歯にくっつかないキャラメルでとても美味しいんだよ」と。
母がご夫婦にお礼を言い、僕はその場ですぐに口にしました。
記憶の中で、チェルシーを食べたのは生まれて初めて。
キャラメルではないけど、美味しくてその後いい年したオヤジになっても何となく見つけては買っていました。特にヨーグルト味。
そして2024年の春、チェルシーが生産中止になったとテレビか何かで見ました。
ひっそりと生産が中止になるお馴染み商品がほとんどの中、チェルシーの生産中止はメディアでも取り上げられて多くの人に愛されていたのがわかります。
僕も「淋しいな」と思うとともにあの優しい老夫婦のこと、「チンチン」と鐘を鳴らして発車する黄色い都電を懐かしく思い出しました。
母の思い出
生前母が話をしてくれた都電に纏わる話で、母が学生時代、山谷地区を走る電車に乗車したときのことです。山谷地区ご存知ない方は、漫画「あしたのジョー」の舞台になった街と理解してくださればいいかと思います。「あしたのジョー」を知らない? むむむむ(汗)
母は学生時代にその地区を乗車中、よく他の乗客からツバをかけられた、と言い、その路線は「魔線」って呼ばれていたんだよ。って聞かせてくれました。
一昨年の秋に母が亡くなり学生時代の友人が焼香に来てくださりました。
そして仲良しどうし都電に乗って学校に通ったり、お洒落して買い物や映画を観に行った楽しい話を昨日のことのように懐かしさいっぱいで話してくれました。
東京さくらトラム ん?
1972年以降東京に残っている都電は早稲田・三ノ輪橋間を結ぶ荒川線だけです。今「東京さくらトラム」って言うのですね・・・。
そのコトバを使っている人を見たことありません。通じるんですかね。
桜よりも沿線に植えられた薔薇のイメージのほうが僕には強いのですけど。
きっと飛鳥山公園や荒川遊園の桜を意識した名称なのでしょうかね。
昔、国電からJR線に変わるころ「E電」と言う名称が付けられましたが、いつの間にかなくなりました。それと一緒かな。
飛鳥山から王子駅までは道路との併用軌道、カーブなうえクルマを運転していても気を使います。交番のお巡りさんも立番していることが他所と比べて多いような気がします。
暮らしの中の都電
たまに大塚から荒川区役所前までを利用します。
他に早く行く方法は他にもあるのですが、時間があるときは都電を利用します。
昼間、席が空いていも座ることはしません。先に進むにつれて乗客は増えていきご高齢の方の利用が多くなります。数分おきに電車は来ますが、どの車両もいっぱいです。沿線に住まわれている方、特にご高齢の方の重要な交通手段であることは間違いありません。
今あちこちでバスの運転手不足で減便を余儀なくされ通勤や買い物、通院に困っている方が地方都市を中心にたくさんいると連日のように放送されています。
経営問題もありますが、そもそも日本から生産年齢、いえ、人そのものがいなくなっているのが根本問題です。
沿線のお家の中が覗けてしまうような距離感で走る都電。
人々の暮らしに欠かせなくいつまでも残って欲しいものです。
リニアモーターカー? なくても一向に。
スマホ? 全然。
都電が縦横無尽に走っていた頃の方が人も心も全然豊かでしたから。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?