人を不幸にする真実

また週刊誌で人が不幸になった。

私は週刊誌が嫌いだ。

以前某アイドル事務所のアイドルを推していたときも、推していたアイドルが非常に週刊誌のお世話になる方で、表に出てきている時のアイドルとは違う、裏の姿を見せられて、何度幻滅し、それでも信じたいともがいただろうか。

アイドルは夢を売る商売だ。でも、それは仕事。アイドルが私人であるときの姿は、当然醜い。でもそれは人間なのだから、当たり前だろう。

私の、アイドルを好きという気持ちは、男女の醜い関係ではなく、純粋に歌って踊る姿を見て、元気、勇気、夢をもらうという関係。私はアイドルの女性関係なんて知りたくない。アイドルに聖人であってほしいわけではない。アイドルの私人の姿を見たくないだけだった。

私は我慢出来ず、結局2次元のアイドルに逃げた。2次元のアイドルはスキャンダルはないから、と。そして私は声優にハマった。私が声優にハマった頃は、声優さんのスキャンダル記事なんてなかった。テレビに声優さんが出ることだって稀だった。声優がテレビに出るとなれば、推していなくたって親戚のような気持ちで「わ〜！○○さんが出てる！！！！」と見ていた。Twitterだって大騒ぎだった。

でも今や、声優さんがテレビに出ることは珍しくない。音楽特番にだって声優さんが当たり前のように出るような時代だ。そして、声優さんのスキャンダル記事が出るようになってしまった。

以前とある声優さんの記事が出た時、昔よく見せつけられていた推しの私人の姿を見せられて、私は本当に悲しくなった。ああ、ここにまで魔の手が迫ってきたのか、と。私が心の底から嫌悪する、盗撮された推し。無防備に歩く姿、どうして、どうして。何も悪いことをしていないのに、どうして写真を撮られなきゃいけないんだ。週刊誌の「いつでも記事は書けるんだぞ」と言わんばかりの姿勢。寒気がした。

声優さんがテレビに出た時特有の、「すごいすごい」と言うだけの、よく知りもしないのに扱わなければならないから仕方なくやっている、というような雰囲気。あんなことをしていたくせに、金になると気づいた途端写真を撮り始める。アニメがヒットすればニュースにしてすごいすごいとおだて始める。あなたたちは、犯罪者がアニメが好きだったという、私達からすればだから何だという無意味なニュースを真剣な顔で流していた人間だということを、私は忘れていない。

私たちは手のひらで転がされているように感じてしまう。

アニメを観ているのは、ゲームが好きなのは、その作品が私たちに元気をくれるから。広くて自由な世界に生きる彼らが、狭くて不自由な世界に生きる私の背中を押してくれるから。いろんなことで苦しんで、もがいて、それでも大切なものがあることに気づかせてくれるから。

確かにその素晴らしさを知って欲しいけれど、馬鹿にしてかかる人達に、私たちの世界を壊されたくなんかない。そんなことになるくらいなら、いっそのこと遮断したいとも思ってしまう。

でも、推したちは、作品を多くの人に知ってもらえて嬉しいと言う。その純粋な笑顔に心打たれ、彼らの夢を加速させるためには、もっと多くの応援が必要だからと割り切らなくてはいけないと決意する。

私はそんなジレンマを抱えている。

声優さんで結婚を公表されていない方は多いのだと思う。それは、比較的狭い界隈だったから、世間からの注目度も低かったから、成り立っていたもので、世界が広がることでそれを壊そうとする人が現れてしまった。

彼らの努力のおかげで業界は広がって、悲しいことに週刊誌に目をつけられてしまった。

秘密を暴こうとする人がいなければ、たとえお花畑だと言われたって、確かに何も知らないことで私たちは幸せでいられたのだから、それでよかったじゃないか。 

今回の報道で、何人の幸せが壊れただろう。知らなければ私たちは幸せでいれた。知らなくていいことってあるんだと強く感じた。知らせないことで幸せを守ってくれていた人がいた。ファンのことを考えて、自分のプライベートを明かさないという、正しい選択をしていた人がいた。声優という職業でなければ、人目を気にして外出したり結婚指輪をしたり、たくさんの幸せを味わうことができただろう。結婚報告を喜ばしいこととして友人や家族に伝えられただろう。

アイドル化されてしまった声優業界が彼らを縛って、秘密を守ってみんなの幸せを保とうと努力するようになったのだ。誰も悪くないと思いたい。私が声優を応援して歌やグッズでお金を使えば使うほど、"大人"からしたらそれはアイドルに見えてしまうのだろう。でも、私はそんなことは望んでない。ただ幸せを届ける人と受け取る人の関係でありたい。素敵な音楽にはめいっぱいの賞賛を送りたい。素敵なお芝居には大きな歓声をあげたい。

そのなにが悪い。

声優さんに幸せになってほしい。結婚を隠していることにはきちんとした理由がある。それを第三者が勝手に壊さないでほしい。

そして、声優はアイドルじゃない。

それが、私がヲタクをしていてたまに苦しくなる、嫌悪を抱いてしまうところ。