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【短評】小説「ミッキー7」これを映画的に面白くするのは苦心しそうだが…

使い捨て人間(エクスペンダブル)――それが俺、ミッキーの役割だ。氷の惑星ニヴルヘイムでのコロニー建設ミッションにおいて、危険な任務を担当する。任務で死ぬたびに過去の記憶を受け継ぎ、新しい肉体に生まれ変わる。それを繰り返し“ミッキー7”となったのが俺だ。だがあるミッションから命からがら帰還すると次のミッキーこと“ミッキー8”が出現していて……!? 極限状況下でのミッキーの奮闘を描く、興奮のSFエンタメ! 解説/堺三保

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主人公の名前を堂々と冠したタイトルではあるが、実はそこに至るまでの周辺世界の描写の方が面白かったり…。

主人公の軽妙さと皮肉、細かい世界観描写でグイグイ読み進められるが、展開は鈍足。ミッキー7とミッキー8のパラドックスもさほどのサスペンスは起こらない。エクスペンダブルに任される仕事も、ドローンで済ませられそうなものばかりで、そこに必然性を見つけるのが少々難しい。

とはいえ世界観については面白い描写があって、「人類離散(ディアスポラ)」「バブル戦争」「星をまるごと侵略するクローン軍団」など頭を空っぽにして読める楽しさもある。

しかし基本的には人対人の物語なので、これをSF映画として面白くするのは苦心するだろう。ファーストコンタクトものとしてはそこまで面白みのないムカデとの格闘や閉塞的である種ありふれた宇宙船での情事を、映像としてどうスペクタルにするのか、あるいはスペクタルにはしないのか。

これを読むとポン・ジュノが原作よりもミッキーを10回多く殺したい気持ちが分かる。

『ミッキー17』2025.2.7公開

ユァンがベルトは良いとして、ラファロがマーシャル司令官はちょっと違う気が…。どうなんでしょう。

そしてすっかり忘れていたが、ポン・ジュノ×SFといえば「スノーピアサー」。あちらも「パラサイト 半地下の家族」と同様、凝縮された格差社会構造をSFエンタメに落とし込んでいたが、果たしてそれ以上のものが「ミッキー17」で見られるのか。楽しみに待ちたい。

『スノーピアサー』(2013)

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