小話『ヨウランと飲みかけのお茶』
子供の頃から医者になりたかったヨウランは、東の国に有能な赤ひげ先生がいると聞き、遠い遠いアジアの国よりやって来た。
きっと、この先生に師事すれば自分も素晴らしい医師になれるかもしれないと期待して、ハードな勉強を重ね、先輩の嫌味も聞き流し、日々頑張ってきたのだ。
だが、結局のところ現実は違うのだ。
「ヨウラン! アントニー先生がどこにもいないんだが」
「え、さっきまで診察中だったような気がするんですけど」
「私もそう思ったんだが、急に裏口から出ていったという目撃情報がある」