小話『ハルと都会の街』
とある稲荷神社の神主の家系に生まれたハルは、生まれた時から“和”にまみれた生活をしていた。特に、両親と年の離れた美しい姉は和装姿以外見たことがなかった。なのでハルも今まで洋服というものを着たことがなかったが、さすがに今年から小学校に上がるのだから洋服が必要だと姉と一緒に買い物に出掛けた。見たことのない都会の街。そこでハルは迷子になってしまった。人込みに飲まれてしまい、つい姉の手を放してしまったのだ。石畳の歩道で途方に暮れて、行きかう人や車の波をハルは涙をこらえながら眺めていた