「4人合わせて300円」アフリカ大陸縦断の旅〜ザンビア編⑧〜
2018年9月15日、ザンビア最大の観光地であるビクトリアフォールズに向かう日。ジンバブエ側からも見られるということで、入国を考えていた私たちでしたが、コレラウイルスやらテロやらの噂を立て続けに耳にした私たちは、ザンビア側からのみ観光することに決めました。
ビクトリアフォールズまで、空気の澄んだ林道が続きました。高所恐怖症の私が他の観光客に笑われるということもありつつ、私たちは滝の前に到着しました。そして、そこに広がる大自然に、しばらく心奪われていたのでした。
Y氏の指示の元、柵のギリギリまで近づくことになる私。
「ちょっと、もうこれ以上無理です。」
屁っ放り腰で情けない私の姿を見て、Y氏はさらに注文を付け加えました。
「その岩に乗った方が映えるわ!すぐ終わらせるから、そこで耐えといて。」
柵の手前、偶然にも足元にあったセットのような岩に、震えながら私。
「(なんでこんなちょうどええ所に、ちょうどええサイズの岩あんねん。撤去しといてくれよ。下だけは見たらあかんぞ、下だけは・・・。)」
それでも絵になる写真を撮ってもらいたかった私は、大自然満喫してますよ、と最大限に格好つけて固まっていました。
「おっけいおっけい、ええ感じやで。」
ありがとうございます、と言いながら柵から急いで離れた私。写真を確認することなく、その場に座り込みました。そして、S氏、ぴょんす、と撮影が終了。その後はしばらく、ビクトリアフォールズを見つめる3人、の背中越しから私もそれらを眺めていました。
「いやぁ、これは見に来て良かったわ!」
「さすが世界遺産、もし次があるなら雨季のビクトリアフォールズも見たいけどな。」
「その時もY氏に写真お願いして良いですか?」
来た道を引き返しながら、盛り上がる3人。そして、終始苦笑いの私。そして午後3時前、林道を抜けた私たちは、再び入口付近のお土産屋に戻って来たのでした。
「お、兄ちゃんたち戻って来たんか。ビクトリアフォールズはどうだった?」
「美しかったです。雨季にも来たいと思います!」
と即答の私。
「「「嘘つけ!笑」」」
と一件ありつつ、お土産を見て回る私たち。多様なラインナップに購買欲が湧きましたが、さすがは大観光地。どの店も服が5000円、装飾品は500円以上、という節約旅の私たちが購入するには、非常に厳しい価格設定。しかし、せめてこれだけは、と思い手にした木の器。
「これはいくらですか?」
「小さいのが1つ500円、大きいのが1つ800円だね。」
「えーっとじゃあ4枚買うんで、どれでも合計2000円にしてください。」
「2500円ならいいよ。」
「じゃあ違うところ行きます。」
この駆け引きを何度かした結果、見事に値切り成功。サイ(小)、カバ(小)、トリ(大)、古代人(大)という4枚のティンガティンガを、1800円で購入。そして、4人それぞれがお買い上げを完了させたところで、私たちは門を出てバス停に向かいました。
「ビクトリアフォールズより楽しんでたやん!」
「さっきの岩とか吊り橋に、買ってた4枚の皿置いて来ていい?」
「お気に入りのやつから順に、ギリギリのところに置くわ。何優先する?」
「いや、自分の命ですよ!」
なんて話をしながら、17時発の無料バスを待つ私たち。とそこへ、この観光地の職員らしき女性がやって来ました。
「あなたたち、もうバスは来ないわよ。」
「あ、そうなんですか。分かりました。」「教えてくれて、ありがとうございます。」
ビクトリアフォールズの営業時間の最終が17時であったため、なぜか無料送迎バスの最終も17時である、と勝手に思っていた私たち。
「タクシーで帰るしかないか。」
「まぁ4人で割ったら安いでしょ。」
閉門直前まで中にいて無料バスを逃す、私たちのような観光客をターゲットにしたタクシーが、近くに数台停まっていました。
「あのー、すいません。さっきのお土産で結構使ってしまいまして、もうお金ほぼないです。」
「それなー、俺もやねん。」
「うん、俺も。」
「俺も。」
ATMが近くにあるはずもなく、なけなしのお釣りを4人分集めた結果、300円にも届かず。バスで約30分かかった行き道を考えると、足りないこと間違えなし。
「まさかの歩き?」
「いや、それはきつすぎる上に危なすぎる。」
Y氏の手に乗った小銭を見つめながら、途方に暮れる私たち。そうしている間にも、他の観光客たちを乗せて、次々と減っていくタクシー。
「さすがに今残ってるタクシー乗らないと、やばいかもな。」
大自然ビクトリアフォールズ、その周りももちろん大自然。建物は一切なく、もはやここに来るためだけに作られた道なんじゃないか、と思うほど車通りのない荒野に囲まれた1本道。営業時間外にタクシー通りかかるとは、到底思えませんでした。
「もうこの金で勝負するしかない。」
「せめて街中まで行ければ、やな。」
取り残されることだけは避けたかった私たちは、分の悪い交渉を始める他ありませんでした。