見出し画像

「一堂に会す」アフリカ大陸縦断の旅〜タンザニア編➉〜

 2018年9月5日、無事にY氏の診察も終えたところで、3日後に合流するS氏と4人でザンジバル島へ向かうため、フェリーのチケットを購入するため、港へと向かっていました。第1希望の会社からはまさかのフェリーが出ていないらしく、仕方なく第2希望の会社から4人分のチケットを購入。そして、晩飯は久しぶりの外食。とても300円とは思えない量とクオリティのバターチキンカレーに感動。私たちは毎晩ここに来ると決めました。

 2018年9月6日、午前9時半起床。着実に起きる時間が遅くなっていく私たち。朝食のフルーツがバナナからスイカに変わっていたことを3人で話したことは、私たちは変化のない平和な日常を物語っていました。

「今日はS氏が来る日ですよね?」

「無事バスに乗れてたら、そうやな。」

「魔の渋滞に巻き込まれていただいて。」

「まぁ何やかんやあって、俺らと同じぐらいの時間に着くやろ。」

「それまで各々ゆっくりしよか。」

 とりあえず時間を潰すため、水しか出ないシャワーを浴びていました。 

「(かと言って、ほんまにゆっくりするのも嫌やしなぁ。)」

 午後3時頃、宿に戻ってきた私。数時間の街ブラで得たものと言えば、乾いた髪と封の開いたタバコ、それに「私の地元に行ったことがある」という物売り男性の大嘘ぐらいのものでした。

 レストランやスーパー、交通機関やある程度の観光施設など、さすがは大都市ダルエスサラーム。お金さえあれば、時間を持て余すことはなかったはず。しかし、節約生活の私にとって、この場所でのこの状況は暇そのもの。サファリで星空を見上げていたあの時の「暇」とは様子が異なり、溢れる情報と物質の中にロマンはありませんでした。「暇とロマンは表裏一体である。」この枕詞として、「お金の価値が全く失われた場合」という文言が必須。

「(無人島に何か1つ持って行くとしたら何?こんな質問に現金と答える奴はおらん。金銭価値が更地になったこの状態で初めて、暇がロマンに変わるんじゃないか。お金使えば手に入る、こう考えたんが間違いやった。楽な発想してたんやな。せっかく生まれた思考の余白を、簡単に物質で埋めようとするんじゃあないよ、少年。)」

 切れかけたタバコに気付いた私は、また街に繰り出しました。

『金が必要だという現実を受け止めた上で、その価値を更地にできた時、暇な時間がロマンに変わる。』


 午後5時頃、談笑しながらロビーでトランプを満喫していた私たち。すると、玄関の扉が開き、S氏が登場。

「おおっお久しぶりです!」

「無事着いたんやな。てか早くない?」

「そう?これでも遅れた方だけどね。」

「めっちゃ渋滞してなかったですか?」

「いやぁ別にそんなかな。どこからバスに乗ったの?」

「俺らはアルーシャやけど、S氏は違うん?」

「あぁじゃあ俺とは違うね。」

 どうやらS氏はアルーシャより少しダルエスサラーム寄りの街であるモシという場所から来たとのこと。日没後の到着になることを避けるため、なるべく出発が早く、休憩や経由による停車回数が少ない便を選ぶという理想的な判断。さらに私たちの支払った額よりも安かったことが発覚しました。

「トイレ休憩少ないの選んだから、全然食べれてなくて。めっちゃお腹空いてんけど、どっか良いところある?」

「それはもう、任せてください。」

 S氏が自室に荷物を置いてすぐ、私たちはあのレストランに向かいました。相変わらず安くて美味い料理に、S氏も驚きの様子。食あたりでお腹を壊して入院していた人間とは思えないほどの食べっぷり。

「こりゃ毎日来るわな。」

 大満足で宿に戻り、今後の予定を話していた4人。

「そういえば、フェリーのチケットありがとう。いつ出発だっけ?」

「明後日やな。朝9時半の便やったと思う。」

「おっけい。てことは明日タンザン鉄道のチケット買いに行こうかな。3人はいつ出発?」

「来週の火曜日です。」

「じゃあ俺もそれに合わせようかな。タンザニアはザンジバルが目的だったし、そんな長くいなくてもいいや。何よりも1人で2泊3日はしんどい。」

「じゃあ4人で1部屋完璧やな。」

「チケット売り切れないように早めにタザラ駅行ってくださいね。」

 おおよその予定も決まり、トランプをしながら談笑していると、玄関の扉が開きました。大きな荷物を背負った男性3人組。その見た目は完全に日本人でした。割と長めに目が合い、無言の会釈。彼らは受付を済ませると、上の階へ上がって行きました。 

「え?なんか日本人すぎて逆に声かけられへんかったわ。」

「逆って何すか。確かに何か変な間ありましたね。」

「ここに4人も日本人おる時点で珍しいのに、そんなことある?」

「次会ったら日本語で1回挨拶してみますわ。」

 謎の緊張感のもと、大富豪続行。すると、階段を降りてくる複数の足音が聞こえてきました。

「「こんばんは〜日本人の方ですか?」」

 私たちはロビーで、彼らは荷物を置いた部屋の中で、おそらく同じような会話をしていたのだと思われような初接触。

「あぁ、やっぱり日本人ですよね。」

「そうです、そうです。」

 トランプの散らばったガラスのテーブルを囲うように、タンザニアはダルエスサラームで日本人7人が一堂に会しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?