「偽物のピラミッド?ー誰もいない砂漠ー」アフリカ大陸縦断の旅~エジプト編⑥~
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2018年8月16日午後2時頃。ピラミッド行きの車まで、私たちを案内してくれた謎の親子。その車内で、私たちに話しかけてきたムーディ。彼らと共に馬に乗った私たちは、かの有名なギザのピラミッドへ向かうはずでした。
しかし、私たちが進んで行く方向はピラミッドとは真逆。遠ざかるピラミッドを背に、徐々に募っていく不安と恐怖。
「(このまま彼らについて行って良いのか、、、。)」
それでも、私たちが抱く彼らへの揺るぎない信用が、疑う心を抑えました。
道中、彼らは様々な店に立ち寄り、食べ物や飲み物を私たちに無料でくれました。そして、馬に乗って移動すること、1時間半。暑い日差しと乗馬によって削られた私たちの体力も、そろそろ限界に近づいてきた頃。
「先にお金を受け取っていいか?後30分ほどで着くから。」と言うムーディ。
「(お金を渡せば、もう引き返すことはできない。まだ砂漠も見えていない、こんな街中から、後30分で着くのか、、、。)」
と心の中ではこう思いつつも、断るような大きな問題が、まだ発生していないという事実。頭によぎる不安よりも、彼らへの信用とこれから始まる未知の経験への興奮が勝っていました。
「いくら払えばいい?」
「2人で3万だ。」
「(安い、、のか、、?)」
そうです。私たちはそもそも、ピラミッドに行くツアーの相場を知らなったのです。これが、安いのか高いのか分からない私たち。
「(馬にもラクダにも乗せてもらえる。ピラミッドを見た後に、その中に入らせてもらえる。そして、登ることもできる。さらに晩御飯はピラミッドを見ながら食べ飲み放題。移動中の飲食も無料。これで2人で3万円か。そんなに高くないのかもしれない。ツアーはもとから高い値段のはず。騙されていたとしても、ほんの少しだろう。)」
何とか頭の中で整理をつけた私たちは、財布代わりのジップロックを取り出し、ムーディに3万円を手渡しました。
もう後戻りはできない。ここからの私たちは、彼らに付いていく以外の選択肢はありませんでした。
そして、ここから馬に乗ることおよそ1時間。ようやく見えてきた砂漠地帯。辺り一面の砂景色。観光客はどころか、エジプト人まで、誰もいない。貸し切り状態の広大な砂漠。
この状況に興奮した私たちは、全速力で馬を走らせ、ムーディらの案内のもと、ピラミッドがあるとされる場所へ向かいました。
「着いたよ。ここがピラミッドだ!」
「(え、、、、、?)どこ??」
「これだよ、これ!」
雑に積まれた石のような塊。私たちの膝下で、弱々しく組み合わさる謎の物体。見上げるはずだったピラミッド。しかし、今にも崩れそうな、というよりかはもはや崩れた後の景色。そこからは、何の歴史も感じ取ることはできませんでした。
「(さっき慌てて作ったやつ???それとも未完成のピラミッド???)」
さっぱり状況が理解できず、ただ突っ立っていた私たち。それを見てムーディは何やら説明を始めました。
「これは古代エジプトの王、サッカーラが眠っている墓なんだ。7000年以上の歴史があるんだよ。この場では古代からエジプト人が信頼していた、占いも行われていたんだ。その跡も残っているから案内するよ。」
そう言いながら、なんの躊躇もなく、歴史があると自ら言っていたサッカーラの墓を土足で踏み散らかして行く、笑顔のムーディ。
案内されるがまま、彼に付いて行くしかない私たち。奥へ進んでも、墓に登っても変わることのない景色。こんな辺鄙な場所で私たち以外に誰もいない、、、。
「(そうか。誰もいないんだ。ギザのピラミッドが見えたあの街中から約3時間の移動。そして、支払ってしまった3万円。もう引き返すことができず、付いて行くことしかできなかった私たち。今更、お金を返してくれ、と言ったら何をされるか分からない。相手は何を隠し持っているのかも分からない。永遠に続く砂漠。ここがどこかも分からない。もう、どうしようもないところまで来てしまった。)」
ここに、私たちを助けてくれる人など、一人もいないんだ。
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