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チカシラ街2〜アンダーカヴァー銭湯潜入捜査官

2020年夏、今回のコンセプト同様に「近いが知らない街に我が身を投げ込む」を意図に浅草行で逗留した時は、少なからず多種の新旧の知人と再会をしたりと街での滞在意図が明確であった。夏の浅草、インバウンド客なしは至極快適であった。今回同様、東京麓郷スタジオからの移動は人動式自動車であり、吾妻橋より河を越えてスカイツリー周辺、錦糸町方面までまるで夏休みの少年のように行き先をあてどなくふらふら。その中で、旧友に連れ立ってもらった老舗の浅草の地元居酒屋で隣り合わせたのが浪曲寄席の木馬亭の席亭氏であった。我々の会話にフェードインしてきたので互いに身の上を自己紹介し合うこととなった。その頃、根岸吉太郎監督の名作「遠雷」を見返したばかりで、席亭氏は監督の実弟であることを知り、私の身に日々起こるシンクロニシティを感じた。

浪曲に興味を抱いた処、高田文夫先生の「ラジオビバリヒルズ」で同タイミングで木馬亭先代のドキュメンタリー映画が一日限り、渋谷ユーロライブで上映されることを知り観劇。話芸の発展形の音楽表現を継続している我が身としてはシンパシーを抱き、すぐに「木馬亭」に寄せてもらい、一昨年の秋に始めることとなった「金3朗奴SHOW」に新進浪曲女子・港家小ゆき女史を見染め、参加してもらう物語へと連なったのである。彼女に声を掛けるまで数十人の浪曲師を目にしてのこと。


さて知らない街に着いたら、銭湯を目指す。未開の銭湯があまた点在するから今回の逗留エリアを最終的にセレクトしたと言っても過言ではない。

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東口と西口の大きな繁華街を抱える逗留地界隈、まずは黒湯、炭酸泉の西口から奥まった浴場へ。知らない街へ繰り出す時は銭湯と地場の飲食店。入湯者はこの地の生活者だから知ることで身の置き方をチューニングしてゆく。広めの浴槽の前に一面小さな金魚が泳いでいる水槽。上から見下ろす無数の金魚ではなく眺めることの出来る無数の金魚。

小さな子供なら怖がるかもしれない、群だ。

金魚の大群に気を取られて、壁面の注意書きを見逃してしまい自らの足感覚で浴槽に入るとずるっと段差に気づかず転びそうになる。そばに居た70手前の老紳士「せっかく温まりにきてころんじゃあつまんないよ。気をつけな」。品の良い感じの丁度良い湯加減同様な優しい声掛けコミュニケーション、品の良い方の下町感覚。都心の銭湯では入れ墨半身浴でコミックを読み耽る反社的青年が闊歩してたりもするのだが安心感のある生活者の憩い場所であると思った。

「人生でこんなに金魚に見つめられることはないだろうな。面白いね」と帰り際、整然とされた受付フロントの若兄さんに伝えるとマスク越しに爆笑されたよ。こうして少しずつ私は街に入ってゆく。

普段の都市生活だと能動的に情報を取りに行くゆえ、TVを所有しないと動画配信サービス、サブスクと自分の趣向を元にエンターテイメントを享受するだけである。予想外の出会いは少なくなっている。久しぶりに最新形のTV画面、あまり興味の持てないオリンピックを付けっぱなし寝落ちす。普段は寝付き悪いのだが、初日12キロ程を人動式自動車移動でそこそこの疲労ありゆえ。しかし夜中27時頃目覚めてしまう。画面にはジョーカーで日本でも認知度が上がったホアキン・フェニックス主演の映画「Undercover」。NY舞台ということで見入ってしまう。CM早送り一時停止も停止も出来ないが、再度寝入れず観ることにする。悪役ロシア人マフィアとプーチンが重なるが、現在進行形の国際紛争暴発前の現在地、どうにも出来ないことどうにもならないで欲しいと思いながら見終わる。こうした受動体制ままのエンタメ享受の態勢にも出色の感覚が訪れる感覚を思い出す。


翌朝、テレビリモコンに自分が加入している動画配信などが紐づけられることを知りトライするが困惑岬。仕方なくチェックイン時にお世話になった「SAIDESUKA」さんに部屋まで来てもらい、設定を手伝ってもらう。色々お礼を述べてコミュニケーションを図るも最後はやはり「さいですか」で終わる。雪か雨かで動きの変わる1日がゆっくりはじまった。

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