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右と左で温度が違う『Hot and Iced Tea』

先週、ご紹介した上下の温度差を味わうスープ。

今回は左右の温度差でインパクトを狙います。イギリスで最も有名なシェフ、ヘストン・ブルメンタールが開発したテクニックで、Fat Duckではデザート前の口直し的に(英語で言うところのpalette cleanser)提供されています。

問題は材料の入手。このテクニックにはジェラン(type F)という熱耐性があり、凝固力も強いゲル化剤を使いますが、ジェランはそこらへんのスーパーでは手にはいりません。(ジェランの使い方もそのうち紹介しますが)そこで今回は粉寒天で代用します。また、オリジナルには砂糖やクエン酸ナトリウム、リンゴ酸、塩化カルシウムが入ってますが、省略しています。

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お茶を1L作ります。今回は凍頂烏龍茶ですが、Fat Duckではアールグレイティーを使用。種類はなんでもいいと思います。

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次の課題はゴムベラなどにあった大きさの器を用意すること。器の大きさにあわせてプラ版などを切って仕切りを用意したほうが確実なのですが、ちょっと試すならこの程度でも充分。

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1Lのお茶に対して2g〜3gの粉寒天を投入し、火にかけます。

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寒天なので沸騰を確認してから火を止めます。

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流水で冷やします。

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冷蔵庫で冷やし固めました。この状態ではゆるーいゼリーです。

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固まった寒天をミキサーにかけます。ハンドミキサーでもOKです。するとゼリーがとろみのある液体になります。これは他のソースなどにも応用できる流体ゲル(Fluid Gel)と呼ぶテクニック。

例えばクラシックな方法で玉ねぎ入りのホワイトソース(ソース・スービーズ)を作ると小麦粉とバターがあわせて全体の2割程度入ります。そうなるとつなぎとしての粉の味が強く出るので、牛乳や玉ねぎの風味が薄くなります。そこでヘストン・ブルメンタールは玉ねぎを牛乳で煮出したところに寒天を加え、凝固させた後にミキサーにかける手法を発表しました。このテクニックはModernist Cuisineなどにも取り入れられ、一般化しています。他にもオレンジジュースにコーンスターチでとろみをつけるとやっぱりデンプンの味が風味を損ねますよね? そこでオレンジジュースに寒天を加えて固めた後、ミキサーにかければ(デンプンよりも寒天の方が使用量が少なくて済むので)風味が残る、というわけ。

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さて、話を戻しましょう。そのままだと気泡が目立つので、一度加熱して泡を取りのぞきます。真空包装機があればそれにかけてもいいのですが、さすがに家にはないので。

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加熱すると空気が抜けるので、透明感が戻ってきます。

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500ccずつビーカーなどにいれて冷蔵庫で冷やしましょう。片方が冷たい、もう片方が熱い液体になるわけです。

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しっかり冷えました。一度ミキサーにかけて液状にしているので、ゼリー状にはなりませんが、泡だて器て空気を入れないようにして撹拌して、さらに滑らかな状態にします。

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すごく丁寧にやるならさらしなどで漉します。ま、この作業は必要ないかもしれませんが……。

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残りのゼリー茶を50度以上、60度以下まで加熱します。 これが温かい部分になります。ジェランだと72℃まで温められるんですけどね、、、。

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さて、いよいよ最初に用意した器に二つの液体を均等に注いでいきます。ようは仕切りがあればいいのです。

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ゴムベラを引き抜くと、、、右側が温かく、左側が冷たいお茶の出来上がりです。

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ちょうど熱いと冷たいがセンターになるように提供してください。わかりやすいように片方のお茶に色をつけてみました。左側が熱いお茶で、右側が冷 たいお茶で、混ざり合っていないことがわかると思います。ちょっと冷たい部分が 多いのは注いでいだ量が均等ではなかったから。(一人で撮影しながらお茶を注ぐのは難しい)

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色をつけなければ見た目から異なる温度のお茶がカップに入っているとはわかりません。つくってから3分位で温度が馴染んでいくので、なるべく早く提供しましょう。暑さと冷たさが口のなかで入り交じっていく感覚が新鮮です。

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樋口直哉(TravelingFoodLab.)
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!